代表的な芳香族カルボン酸。昇華性のある無色の結晶。天然には、安息香中に遊離およびエステルとして存在するほか、ペルーバルサム、トルーバルサム中にもベンジルエステルとして存在する。実験室的にはトルエンを重クロム酸塩と硫酸により酸化すると得られる。工業的には、以前は無水フタル酸の脱炭酸反応により製造していたが、現在はトルエンの空気酸化により製造している。冷水には溶けにくいが熱水にはよく溶け、アセトン、エタノール(エチルアルコール)などの有機溶媒にもよく溶ける。食品衛生法により許可された防腐剤としてしょうゆに用いられているほか、媒染剤などに用いられる。そのほか、医薬として局所の殺菌・防カビ剤や角質軟化剤にも用いられる。水溶性のナトリウム塩は肝機能診断薬や防腐殺菌剤、清涼飲料水の保存料として用いられる。
[廣田 穰]
最も代表的な芳香族カルボン酸。天然樹脂である安息香(ドイツ語でBenzoe)の加熱によって得られたためにこの名(ドイツ語でBenzoesäure)がある。天然には,安息香中に遊離の状態で存在するほか,ペルーバルサムやトルーバルサム中にベンジルエステルとして含まれる。融点122.5℃の無色鱗片状結晶。アルコール,エーテル,アセトン,熱水に易溶,水から再結晶される。水にわずかに溶けて酸性を示す(pKa=4.21)。100℃以上で昇華する。種々の金属と安定な塩を作るが,その多くは水に可溶。カルシウム塩を乾留するとベンゼンを生じる。また,ベンジルアルコール,ベンズアルデヒドの酸化やベンゾニトリルの加水分解によって得られるが,工業的には,トルエンを二酸化マンガンと硫酸で酸化するか,トルエンの塩素化によって得られるベンゾトリクロリドの加水分解によって製造される。医薬品の製造原料として重要であるばかりでなく,解熱剤や去痰(きよたん)剤としても用いられ,防腐剤としてしょうゆに添加されている。
ベンゼン環のオルト,メタ,パラ位に種々の置換基をもつ安息香酸も同様の方法で合成され,よく似た性質を示す。
執筆者:井畑 敏一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
benzenecarboxylic acid.C7H6O2(122.12).C6H5COOH.安息香中に存在するのでこの名称がある.工業的には,トルエンの空気または硝酸酸化,ベンゾトリクロリドの加水分解などでつくられる.結晶.融点122 ℃,沸点250 ℃.熱水,エタノール,エーテルなどに可溶.酸として種々の金属塩,エステル,アミドなどをつくる.pKa 4.00(25 ℃).防腐剤,媒染剤,化粧品,香料などに使用される.LD50 2700 mg/kg(ラット,経口).[CAS 65-85-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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