月経困難症(読み)げっけいこんなんしょう(英語表記)Dysmenorrhea

翻訳|dysmenorrhea

家庭医学館「月経困難症」の解説

げっけいこんなんしょう【月経困難症 Dysmenorrhea】

[どんな病気か]
 月経の開始にともなって、強い下腹部痛(月経痛(げっけいつう))や腰痛がおこり、日常生活に支障をきたしたり、鎮痛薬(ちんつうやく)を服用しなければならないほどの痛みの強い状態を、月経困難症といいます。下腹部痛や腰痛のほか、下腹部膨満感(ぼうまんかん)、吐(は)き気(け)、頭痛がおこることもあります。
 一般的には、排卵(はいらん)のある月経周期におこり、妊娠出産後には軽くなることもあります。
[原因]
 月経困難症は、機能性月経困難症(きのうせいげっけいこんなんしょう)と器質性月経困難症(きしつせいげっけいこんなんしょう)に分類されます。
 器質性月経困難症は、原因となる病気が存在する場合で、代表的な病気は、頻度の多いものから子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)(「子宮内膜症」)、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)(「子宮筋腫」)、卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)などがあげられます。
 機能性月経困難症は、月経困難症の原因となる病気が認められない場合です。この場合、月経時にはプロスタグランジンという子宮を収縮させるホルモンが分泌(ぶんぴつ)され、これにより強い子宮収縮がおこることが、月経困難症の原因となります。
 ただ、プロスタグランジンのほかに、心理的因子、子宮筋収縮因子などが複雑に影響しあって強い痛みがおこり、特定の因子のみに原因を求めることがむずかしい場合もあります。
[検査と診断]
 原因を調べる検査として、まず、問診と内診、超音波検査(エコー)を行ないます。これらの検査は、一般的に外来受診時に行なわれているもので、これらの検査で不十分な場合や、診断をより正確に行なうために、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像装置)を行なうこともあります。
 また、子宮内膜症の診断には、CA125(腫瘍マーカー(「腫瘍マーカー」))の測定をすることもあります。
[治療]
 機能性月経困難症に対しては、対症的治療として、鎮痛薬、漢方薬などの内服が一般的です。
 鎮痛薬の種類には、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)、インドメタシン(インダシンなど)、イブプロフェン(イブ、ナロンエースなど)、メフェナム酸(ポンタール)、アセトアミノフェン(サリドンエース、ノーシンなど)、アスピリン(バファリン、エキセドリンなど)などが代表的です。
 市販されている薬のなかには、1種類の鎮痛薬のみでなく、効率よく痛みを緩和するために、さまざまな薬の合剤となっているものも多く、鎮痛に対する工夫がみられます。
 漢方薬は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが代表的ですが、漢方薬は体質によって選ぶことがたいせつで、体質に合わないと、効果が現われないことがあります。
 このほか、ホルモン剤を用いる場合や、抗不安薬を用いる場合もあります。
 機能性月経困難症の場合、原因となる因子が多岐(たき)にわたることがあり、個人差も大きいため、有効な薬剤が個人個人で異なることがあります。
 器質性月経困難症では、その原因の治療が基本になります。子宮内膜症や子宮筋腫では、ホルモン療法や手術療法が、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)では、手術療法や卵巣嚢腫穿刺吸引(せんしきゅういん)などが代表的治療法で、原因疾患の治療により、月経困難症の改善が期待できます。
 ただし、手術を行なった場合には、術創(手術の傷)の痛み、手術にともなう癒着(ゆちゃく)の発生などにより、新たな痛みを生じる可能性もあるため、手術するかどうかは慎重に決定されなければなりません。
 器質性月経困難症においても、機能性月経困難症と同様、対症的治療として、鎮痛薬、漢方薬投与などで十分治療効果をあげることができる場合も少なくありません。
[日常生活の注意]
 耐えられないような痛み、1~2年の間に徐々にひどくなる痛みがあるときには、産婦人科で診察を受けるようにしましょう。子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣嚢腫が発見されることもあります。
 これらの病気は、程度が軽かったり、大きさが小さいうちは、薬物による治療が主体となる可能性が高いのですが、大きくなったりすると、原則的に手術となることが多くなります。また、これらの病気は、月経困難症がきっかけとなって発見されることも多く、放置すると不妊症の原因となることもあるため、月経痛が強いときには、検査を受けてみることが必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科「月経困難症」の解説

月経困難症
げっけいこんなんしょう
Dysmenorrhea
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 月経困難症とは、いわゆる生理痛のことです。月経時に下腹部痛、腰痛などの疼痛を訴え、仕事や学業などの社会生活が困難になることもあります。器質的な異常を伴わない機能性月経困難症(原発性(げんぱつせい)月経困難症)と器質的疾患を伴う器質性月経困難症(続発性(ぞくはつせい)月経困難症)とに分類されます。

原因は何か

 機能性月経困難症の原因としては、月経時に子宮内膜でつくられるプロスタグランジンの産生過剰などが考えられています。プロスタグランジンは全身の平滑筋(へいかつきん)を収縮させて頭痛、嘔吐などを引き起こすほか、局所においては子宮の過剰収縮による疼痛を引き起こします。

 器質性月経困難症は子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)などによるものが多く、子宮の奇形によることもあります。

症状の現れ方

 症状は月経に伴う下腹部痛、腰痛、頭痛、下痢、発熱、悪心(おしん)、嘔吐などです。

検査と診断

 疼痛症状の程度を評価するにはVRSとVASの2つの方法があります。

 VRSでは、痛みを5段階に分け、

0.痛みは、ほとんどない。

1.痛みはあるが、日常生活は普通に行える。

2.痛みのために、日常生活に差し支えることがある。鎮痛薬(痛み止めの薬)をのめば、仕事や学校を休むことはほとんどない。

3.痛みのために、日常生活に支障を来している。鎮痛薬をのんでも仕事などを休むことが多い。

4.痛みのために動くのもつらく、1日中横になっている。

のように痛みの段階を典型化し、このなかから選びます。最近の日本の調査では、月経がある女性のうち、VRSで0から4まで頻度はおのおの、約22、46、27、4、2%でした。鎮痛薬を必要とするものが全体の約3分の1程度であることがわかります。

 VASではまったく痛くないものを0、考えられるかぎりの最も強い痛みを10として、10㎝のスケールで自分の痛みに相当する部分にしるしをつけて評価します。

 検査としては、内診、直腸診、超音波断層法などにより器質的疾患の有無を調べます。子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫子宮の奇形の診断にはMRIが有用です。

 また、子宮内膜症、子宮腺筋症が疑われる場合は、補助診断として血液中のCA125(腫瘍マーカーのひとつ)を測定することもあります。

治療の方法

 器質的疾患が原因の場合は、その疾患の治療を行います。機能性月経困難症では、軽度であれば鎮痛薬の投与による経過観察でよいでしょう。

 鎮痛薬としては主としてプロスタグランジンの合成阻害作用をもつポンタール、ロキソニン、ボルタレンなどの非ステロイド性鎮痛薬(NSAID)を月経前から投与します。漢方薬が有効な場合もあります。

 さらに、程度の強いものに対しては、低用量ピルの投与により、月経量が減るのと同時に症状が改善することが多いようです。低用量ピルは器質的疾患を伴う場合にも有効なことが多いようです。

 手術療法としては、腹腔鏡を使った仙骨子宮靭帯(せんこつしきゅうじんたい)切断により靭帯内の求心性(きゅうしんせい)神経を切断する方法や、仙骨前面の神経(そう)を切断する方法もあります。子宮全摘術や卵巣摘除術が必要になることもあります。

病気に気づいたらどうする

 月経困難症は若年女性にはかなりの頻度でみられますが、年齢とともに、また、出産回数とともに減っていきます。

 若年者は、市販の鎮痛薬で対処できる程度のものであれば様子をみてもよいと思われますが、痛みの程度が強い場合や、年齢が高いにもかかわらず月経困難が現れた場合は、産婦人科への受診が望まれます。

大須賀 穣

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)「月経困難症」の解説

月経困難症
げっけいこんなんしょう

月経と同時、またはその前後にみられる下腹痛や腰痛をはじめ不快な月経伴症状で、これが病的にひどく、日常生活に支障をきたし治療を必要とするようなものをいう。月経時の痛みは心因的なものもあり、およそ半数の女性にかなりの痛みがあるといわれる。月経困難症は次のように分けられる。

(1)原発性月経困難症は、子宮筋の過度の収縮に伴うところからけいれん性月経困難症ともいわれる。痛みは第1日目にひどく、若い女性では吐き気や嘔吐(おうと)を伴うこともある。分娩(ぶんべん)や加齢とともに軽快するといわれる。

(2)続発性器質性月経困難症の痛みは、月経開始前からおこり、月経開始とともに軽快または悪化する。原因は骨盤子宮内膜症、子宮筋腫(きんしゅ)、子宮周囲の組織の炎症などで、30歳以上の女性に多い。

(3)膜様月経困難症は、子宮内膜が袋状に一塊となって排出されるのに伴う痛みをいう。

 治療はそれぞれ原因別に薬物療法や手術療法が行われる。

[新井正夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「月経困難症」の解説

月経困難症
げっけいこんなんしょう
dysmenorrhea

月経に際して下腹部や腰部の異常に強い疼痛や全身障害を伴い,日常生活や仕事に耐えられない状態が反復して現れる症候群をいう。軽度,あるいは1年に1~2回起る程度のものは一般に生理的現象であるが,子宮内膜症子宮筋腫,子宮や卵管などの慢性炎症や,心身症的な障害などが起因となっている場合がある。軽度のものは鎮痛剤を内服すればよいが,医師の診断を受けて子宮筋腫,子宮内膜症の有無を確かめる必要がある。未婚婦人の月経困難症は,結婚,妊娠,出産などでなおることが多い。

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デジタル大辞泉「月経困難症」の解説

げっけいこんなん‐しょう〔‐シヤウ〕【月経困難症】

月経痛が病的にひどいもの。子宮収縮が強いなどの機能性のものと、子宮や卵巣に病気があるために起こる器質性のものとがある。

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精選版 日本国語大辞典「月経困難症」の解説

げっけいこんなん‐しょう ‥シャウ【月経困難症】

〙 月経時に激しい痛みや全身障害を伴うようなもの。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典 第2版「月経困難症」の解説

げっけいこんなんしょう【月経困難症 dysmenorrhea】

月経に随伴するさまざまな不快な症状を含めた一種の症候群で,骨盤痛,下腹痛,腰痛,悪心,嘔吐,下痢,不快感,緊張などの症状が,月経開始と同時に,またはその直前に開始し,月経終了前に消失するのが特徴である。臨床的に原発性月経困難症と続発性月経困難症の二つに分類される。前者本態性ないし機能性月経困難症ともいわれ,種々の検査でも骨盤内に器質的病変がなく,最近では,子宮内膜でのプロスタグランジン産生亢進が原因と考えられている。

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世界大百科事典内の月経困難症の言及

【月経異常】より


[月経随伴症状の異常]
 月経時および月経前の随伴症状が異常に強く,日常生活に支障をきたし,就床して鎮痛剤,鎮痙剤などを必要とする病的な状態である。これは月経困難症dysmenorrheaといわれるが,これには二つのものが含まれる。一つは月経開始と同時に発症するもので,これを狭義の月経困難症といい,もう一つは月経前7~10日から出現し,月経開始とともに消失するもので,月経前症候群という。…

【月経】より

…まったくみられない場合や,かえって気分爽快な場合もある。これらの症状は生理的なものであるが,症状が異常に強く,臥床を必要とし,日常生活が妨げられる場合には,病的で,月経困難症と考えられるべきである。また月経前にみられる病的なものを月経前症候群という。…

【月経異常】より


[月経随伴症状の異常]
 月経時および月経前の随伴症状が異常に強く,日常生活に支障をきたし,就床して鎮痛剤,鎮痙剤などを必要とする病的な状態である。これは月経困難症dysmenorrheaといわれるが,これには二つのものが含まれる。一つは月経開始と同時に発症するもので,これを狭義の月経困難症といい,もう一つは月経前7~10日から出現し,月経開始とともに消失するもので,月経前症候群という。…

【子宮筋腫】より

…おもな症状は,筋腫が子宮に発生することからも理解できるように,子宮内膜からの周期的出血による月経の異常である。とくに過多月経(月経の量が多い),月経困難症(月経のときに下腹とか腰が痛い)が挙げられ,症状がひどくなると,月経の時期を問わず出血する不正子宮出血の形をとり,出血が多くて貧血の状態に陥ることもよくみられる。その他,筋腫が大きくなって,まわりの組織,膀胱あるいは骨盤の中の神経や直腸を圧迫するための症状が認められる。…

【通経薬】より

…腹部に充血を起こすような下剤や,刺激性の植物精油剤で,たとえばロカイ(ユリ科植物アロエの葉のエキス)やサフラン(アヤメ科植物)などがあったが,これらはしばしば人工流産を起こす目的でも用いられた。現在では,月経困難症について,その原因がいくつか明らかにされており,その原因を取り除くような治療が施される。状況によっては,時期を選んで女性ホルモンを投与することで次期月経を促進することもある。…

※「月経困難症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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