無月経(読み)むげっけい(英語表記)amenorrhea

  • (女性の病気と妊娠・出産)
  • 無月経 Amenorrhea
  • 無月経 amenorrh(o)ea

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

月経のないこと。生理的無月経は思春期の前,妊娠中,授乳期閉経期のあとに起る。病的無月経には,子宮粘膜に病変のある際の子宮性無月経,排卵異常やホルモン分泌異常による卵巣性無月経,下垂体前葉機能不全による下垂体性無月経,栄養失調や生活の激変,精神的影響による戦時無月経のような機能的無月経がある。

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百科事典マイペディアの解説

月経があるべき時期に発現しないこと。妊娠による生理的無月経と,病的無月経がある。初潮を見るべき年齢になっても月経がない場合を原発性無月経,すでにあった月経が消失した場合を続発性無月経という。原因は脳下垂体の疾患卵巣子宮の異常,掻爬(そうは)後の子宮内膜再生不良などのほか,最近は精神的なストレス,過激なスポーツ,ダイエットや摂食障害によって起こる無月経が特に若い人の間にめだつ。環境の変化,精神的な動揺,過労などによることもある。
→関連項目月経異常

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 月経とは、通常1か月の間隔でおこり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜(しきゅうないまく)からの周期的出血、と定義されています。これは一見、子宮のはたらきだけでおこっているようにみえますが、実際は、視床下部(ししょうかぶ)、下垂体(かすいたい)、卵巣(らんそう)、子宮が、すべて協調しあって発生する現象です。
 この協調がくずれ、月経がみられなくなる状態を、無月経といいます。
 無月経は、18歳以後になっても初潮(しょちょう)のみられない原発性無月経(げんぱつせいむげっけい)と、月経がそれまであったにもかかわらず、3か月以上みられなくなる続発性無月経(ぞくはつせいむげっけい)に分類されます。
■原発性無月経
 原因には、染色体が正常な女性のものと異なっている場合、たとえばターナー症候群(「ターナー症候群」)のように性染色体異常があって、卵巣(らんそう)はあっても卵胞(らんぽう)成分を含まないため無月経になる場合や、胎児期に性管が正常に分化できず子宮や腟(ちつ)がない場合、腟が閉鎖して月経血が体外に排出されない場合があります。
 また、続発性無月経がおこる環境にあるために、初潮がみられない場合もあります。
■続発性無月経
 以前には協調しあっていた各臓器(視床下部・下垂体・卵巣・子宮)の一部分が、障害されてしまった状態です。
●視床下部に原因のある無月経
 続発性無月経の原因の80~85%を占めます。視床下部は、下垂体を介して卵巣のはたらきをコントロールする反面、卵巣から分泌(ぶんぴつ)される卵胞ホルモンに反応し、ホルモンの放出を促進する物質の分泌を調節しています。
 視床下部に原因のある無月経には、強い精神的ストレスによっておこるストレス性無月経、急激な体重減少によっておこる体重減少性無月経、極端な食物の摂取異常、たとえば神経性食欲不振症(しんけいせいしょくよくふしんしょう)や過食症(かしょくしょう)による無月経、過度の運動によっておこる運動性無月経などがあります。
 また、前記のような原因が何もないのにおこる特発性視床下部性無月経も少なくありません。
 そのほかに、ふだんは視床下部によって抑制されている乳汁(にゅうじゅう)の分泌をうながすプロラクチンというホルモンが、視床下部のはたらきが低下することによって過剰に分泌され、このホルモンが原因で無月経になる機能的高プロラクチン血症もあります。
●下垂体に原因のある無月経
 続発性無月経の原因の4~6%を占めます。下垂体は、直接的に卵巣を刺激するホルモンを分泌するほかに、副腎皮質(ふくじんひしつ)や甲状腺(こうじょうせん)を刺激するホルモンと、プロラクチンなどを分泌しています。
 下垂体に腫瘍(しゅよう)ができた場合、とくにプロラクチンをつくり出す腫瘍ができた場合を、乳汁漏出性無月経(にゅうじゅうろうしゅつせいむげっけい)といいます。また、分娩(ぶんべん)の際、大量に出血し、下垂体に血液がいかず、下垂体の機能がなくなって無月経になってしまう場合(シーハン症候群(しょうこうぐん)(コラム「シーハン症候群」))もあります。
●卵巣に原因のある無月経
 続発性無月経の原因の5~9%を占めます。
 卵巣のはたらきは、排卵(はいらん)と、卵巣ホルモン(卵胞ホルモンと黄体(おうたい)ホルモン)の分泌です。
 下垂体から分泌される卵巣を刺激するホルモン(卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモン)の作用により、卵(らん)は育って卵胞となり、排卵がおこりますが、この2つのホルモンのバランスがくずれると、排卵ができなくなります。そして、こうしたことをくり返すうちに、卵巣の中にたくさんの嚢胞(のうほう)ができて、下垂体の指令をさらに受けにくくなってしまいます。このような状態を多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)といい、卵巣性無月経の代表的な病気です。
 また、卵巣に、男性ホルモンや女性ホルモンをつくり出す腫瘍ができても無月経になります。
●子宮に原因のある無月経
 続発性無月経の原因の1~3%を占めます。
 月経は、子宮内膜からの出血です。子宮内膜に障害がある場合、たとえば、くり返し行なった妊娠中絶の掻爬(そうは)手術や、帝王切開術(ていおうせっかいじゅつ)の後、子宮内腔(しきゅうないくう)が癒着(ゆちゃく)して無月経になる場合(アッシャーマン症候群)があります。
●その他の原因
 全身の健康状態がくずれたとき、たとえば、甲状腺や副腎の機能が亢進(こうしん)している場合や、糖尿病、腎不全(じんふぜん)でも無月経になります。
 また、特定の薬によって無月経になる場合もありますので、長期的に内服している薬があるときには、医師に相談してみる必要があります。
[治療]
 初潮は、現在では15歳までに95%以上の人でみられます。16歳になっても初潮がみられない場合は、婦人科の診察を受けたほうがよいでしょう。
 その結果、原発性無月経と診断され、染色体や性管に異常があることがわかった場合には、残念ながら根本的な治療法はなく、対症的な治療が必要となります。なお、腟閉鎖は切開することによって治ります。
 一方、続発性無月経と診断された場合の治療は、原因によっても、年齢によっても異なります。無月経の状態が長期間続くことは、子宮の内膜にとって悪い影響をもたらしますので、専門医に相談し、治療を考える必要があります。
 しかし、初潮後しばらくは、卵巣の機能が未熟なので、経過を観察していくことになります。それ以外は、まず原因を明らかにして、原因を取り除くことから始めます。
 それでも無月経が続く場合には、子宮に原因があるものを除いて、卵巣から分泌する2種類の性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)で、正常の月経周期と比べて足りないものを補うホルモン療法(コラム「無月経治療のためのホルモン補充療法」)を行ないます。
 このほか、視床下部に刺激を加えて排卵をうながすクロミフェン療法などがあり、それぞれの症状に応じた選択をしていくことになります。
 ただし、不妊症の場合には、これらとは異なった治療を行なう必要があります。
 心因性無月経には、精神的なカウンセリングを併用したり、規則正しい生活、適度な運動、食生活の注意をしていくこともたいせつです。
 子宮性無月経は、内腔の癒着を剥離(はくり)して、再癒着しないように、ホルモン療法を行ないます。
 なお、例外として、治療を必要としない無月経に、生理的無月経(初経以前、閉経後、妊娠中、産褥期(さんじょくき)、授乳期)があります。

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世界大百科事典 第2版の解説

女性において月経がみられない状態をいい,生理的無月経と病的無月経とがある。生理的無月経は思春期以前,妊娠・産褥(さんじよく)・授乳中および更年期以後の無月経をいい,病的無月経はそれ以外の時期で,なんらかの疾患が原因となって,3ヵ月以上月経がみられないものをいう。病的無月経には,以下のようにいろいろな分け方がある。
原発無月経と続発無月経]
 原発無月経は,成熟期になっても月経が一度もみられない場合で,通常,満18歳になっても初潮のみられないものをいう。

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大辞林 第三版の解説

月経周期が一回以上欠落すること。生理的なものと病的なものがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

月経が規則的な間隔(およそ4週間)で反復しておこらないことをいう。思春期のおよそ12歳ころに初経をみることが多いが、生後一度も月経がみられない場合を原発性無月経といい、いったんみられた月経がなくなる場合を続発性無月経という。子宮内膜からの月経血の排出路が閉鎖しているために血液が腟(ちつ)外に流出しないものを偽(仮性)無月経という。これに対して一般的に無月経というと、子宮内膜から月経出血がないものをさし、真の無月経という意味で真性無月経といわれる。真性無月経は生理的なものと病的なものとに分けられる。前者には幼小児期、閉経後の老年期婦人の無月経、成熟期婦人の妊娠・産褥(さんじょく)・授乳期の無月経がある。病的無月経にはさまざまな原因がその背景にあるが、おもな発生部位別に視床下部性、下垂体性、卵巣性、子宮性、副腎(ふくじん)性などと、全身性疾患に随伴しておこるものなどがある。
 視床下部性無月経は、視床下部から分泌される黄体形成ホルモン放出ホルモンの下垂体に対する刺激が不十分なために、下垂体からの卵巣刺激ホルモンの分泌が不足しておこる。下垂体性無月経は、下垂体での卵巣刺激ホルモンの産生が低下するためにおこる。卵巣性無月経は、卵巣に原因があるために無月経になるもので、卵巣の発育不全、老化、卵巣摘除後、X線照射後などで卵巣からの卵胞ホルモンの分泌が不足するためにおこる。子宮性無月経は、結核性子宮内膜炎や、分娩(ぶんべん)や流産時の子宮内操作と炎症などによって子宮内膜が荒廃したためにおこる場合や、極端に発育が不良な子宮でみられる。副腎性無月経は、副腎皮質の機能亢進(こうしん)や男性ホルモンの分泌が過剰であるときにおこる。全身性の疾患に伴っておこるものは、慢性の疾患たとえば肝硬変、悪性腫瘍(しゅよう)、慢性心疾患、慢性腎炎や、結核などの感染症、肥満、やせすぎなどによっておこる。内科的なホルモン分泌の異常には、甲状腺(せん)の病気(機能亢進症と機能低下症)、糖尿病などがある。以上のように、病的無月経の原因はさまざまなので、原因をよく調べる必要がある。
 原発性無月経では、卵巣の形成がほとんどない先天的な異常によるものが多いので、早期の専門的な診断がたいせつである。既婚婦人の場合には、妊娠を目的にする根本的な原因に対する治療が可能であるのか、妊娠の可能性がなく単なる対症療法にとどまるのか、個々の症例に応じて治療内容は大いに異なる。[新井正夫]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 正常ならばあるはずの月経が欠けること。生理的なものと病的なものとがある。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 性成熟期を迎えた女性で、月経が来ない状態を無月経といいます。これには、生まれてから一度も月経のない原発性(げんぱつせい)無月経と、一度は月経が来たものの無月経の状態に陥った続発性(ぞくはつせい)無月経とがあり、原因は異なります。

 両者の定義は、原発性無月経は満18歳を迎えても初経が来ない状態、続発性無月経はそれまであった月経が3カ月以上停止している状態をさします。続発性無月経は、病的なもの以外にも妊娠、授乳、閉経などの生理的な変化による場合も含んでおり、注意が必要です。

原因は何か

 原発性無月経と続発性無月経の原因には、類似した状態によるものもありますが、両者でまったく異なるものもあります。これらを大きく分類すると表6のようになります。

症状の現れ方

●原発性無月経

 月経が来ないという症状のほか、原因により特徴的な症状が現れます。染色体異常症や卵巣形成障害が原因の場合は、乳房の発育、恥毛(ちもう)腋毛(えきもう)の発毛など思春期に起こる二次性徴の出現がみられないことが特徴的です。

 子宮や腟の欠損によるものの場合は、卵巣や脳下垂体(のうかすいたい)機能は正常のことが多く、ホルモン分泌は正常で二次性徴も認められます。腟中隔(ちつちゅうかく)腟欠損など月経血流出路の異常の場合は、月経同様に周期的に起こる下腹部痛がみられます。

 明白な原因がない、いわゆるただ初経が遅れているだけということも多いのですが、この場合、ほかの二次性徴の出現も遅れていることが多いようです。

●続発性無月経

 月経停止以外に症状のないことが多いのですが、急激な体重減少(体重減少性無月経)、強い精神的ストレス(心因性無月経)など、きっかけとなっている変化がみられることがあります。

 高プロラクチン血症では乳汁の漏出がみられます。脳下垂体腫瘍(のうかすいたいしゅよう)が原因で高プロラクチン血症となっている場合は、頭痛、視野狭窄(しやきょうさく)などの症状が現れることがあります。

検査と診断

 無月経の原因がどこにあるのかをみきわめることが検査の目的です。そのために血液検査によるホルモン検査、ホルモン負荷試験などを行い、原因があるのが間脳の視床下部(ししょうかぶ)か、脳下垂体か、卵巣か、子宮かを診断します。

 とくに原発性無月経の場合、子宮や腟の存在の有無、二次性徴発現の有無、染色体検査による染色体異常の有無についての検査も必要です。妊娠などの生理的無月経の可能性は、続発性無月経の場合にとくに十分考慮しなければいけませんが、原発性無月経でも妊娠の可能性を完全に否定することはできません。

治療の方法

 治療は、原因によって異なるばかりでなく、それぞれの患者さんの目標とする到達点によって異なります。

 すなわち、月経を起こすことを目標とするのか、さらに進んで妊娠の成立を目標とした治療を望むのかという点によって異なるわけです。ただし、原因によっては妊娠の成立が極めて難しい、または不可能な場合もあります。

 月経を起こす治療には女性ホルモン製剤、妊娠成立には排卵誘発剤の使用が基本です。このほか、漢方薬、プロラクチン降下薬、手術、体重調節、カウンセリングなどを、原因や症状に応じて適宜組み合わせて治療します。

病気に気づいたらどうする

 まず、妊娠などの生理的無月経でないことを確認します。いつから無月経になっているか、記録を確かめます。無月経の期間がそれほど長くない場合は、基礎体温の計測を数日から数週間にわたって行い、病院受診時にグラフに記載したものを持参します。そのほか、体重の変化などにも注意したうえで受診します。

関連項目

 乳汁漏半陰陽処女膜閉鎖鎖陰腟欠損腟中隔稀発月経卵巣機能低下症妊娠の診断

久具 宏司


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典内の無月経の言及

【月経】より

…子宮内膜のうち,深層部の基底層(機能層に比べてごく薄い)は,このような特定の血管構造をもたず,ホルモンに反応しないので剝脱せず,機能層が卵巣からの性ホルモンの減少に反応して剝脱する。 妊娠時に無月経になるのは,妊娠すると,黄体が妊娠黄体になり,黄体ホルモンなどが盛んに分泌されつづけ,血中の性ホルモンレベルが維持されるので,子宮内膜は剝脱することなく,月経出血が発来しない。これを生理的無月経という。…

【月経異常】より

…正常月経より逸脱した異常な状態のことで,無月経のほかに,月経の開始時期(初潮)や終了時期(閉経),月経周期の長さ,月経血量,月経時の随伴症状などの異常であり,以下のようなものが含まれる。
[無月経]
 成熟婦人において月経のみられない状態をいう。…

【性腺機能低下症】より

…女性では,卵巣での卵子形成障害およびエストラジオールやプロゲステロンなどの分泌低下がみられる。このような卵巣機能低下症の場合は無月経を伴う。
[男性の場合]
 男性の性腺機能低下症のうち原発性性腺機能低下症としては,先天的なものでは,睾丸無形成,クラインフェルター症候群,ライフェンスタイン症候群,男性ターナー症候群などにより,精細管,間質細胞の双方が障害される。…

※「無月経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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