日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇宙基地協力協定」の意味・わかりやすい解説
宇宙基地協力協定
うちゅうきちきょうりょくきょうてい
正式名称は、「常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定」。IGA(多国間政府間協定Inter Governmental Agreement)と称する。前文、本文27か条と付属書からなり、1988年(昭和63)署名。国際法に従い、かつ平和目的のために、宇宙基地(宇宙ステーション)の設計、開発、運用と利用を行うことについての参加各国の間の協力の枠組みをつくったもので、細部は、了解覚書と実施取決めにゆだねている。国際宇宙ステーション(ISS)の計画は、1984年以来、アメリカ主導の国際協力で進められてきたもので、アメリカ、日本、ヨーロッパ(ESA)、カナダが参加し、遅れてロシアが加入した。日本は、1989年(平成1)この協定を受諾、同時に暫定取決め、了解覚書(MOU)を結び、実験モジュール(JEM)の開発・運用・利用にあたることとなった。1993年ロシアのISS計画への参加が正式に決定され、それに伴い1998年1月、ロシア、スウェーデン、スイスを加えた新たな宇宙基地協力協定が署名された(2001年3月発効)。また同年2月、日米間の了解覚書が署名された(2001年6月発効)。
この協定で宇宙基地というのは、「常時有人の民生用国際宇宙基地複合体」の略称であり、低軌道上の多目的施設で、有人・無人の要素から構成されている。協定は、平和目的、民生利用、相互協力の三原則を柱としているが、平和目的のための利用について、基地を構成する要素の利用が平和目的のためであるか否かは、その要素の提供国によって決定されるとする。参加各国は、その提供する要素を登録し、所有し、要素と宇宙基地上の自国民に対し、管轄権と管理権をもつ。また参加各国は、自国が提供する飛行要素(宇宙基地の構成要素から地上要素を除いたもの)上の自国民について、刑事裁判権を行使できるとするとともに、特定の場合にアメリカの刑事裁判権を認めている。参加各国と関係者は、損害賠償請求権を相互に放棄する。知的財産権の適用については、宇宙基地の飛行要素上の活動は、参加各国の領域内で行われたものとみなされる。
このほか、協定は、宇宙基地の運営に関する参加各国の責任と利用・運用、搭乗員を提供する権利、輸送と通信、宇宙基地の発展とその場合の対応、資金、データと物品の交換について定めている。
[池田文雄]