官打ち(読み)かんうち

改訂新版 世界大百科事典 「官打ち」の意味・わかりやすい解説

官打ち (かんうち)

官職等級が分不相応に高くなりすぎて負担が増し,かえって不幸な目にあうことをいう。《承久記》には,後鳥羽上皇が討幕を決意した確実な証拠として,源実朝が希望する以上に彼の官位昇進させ,〈官打〉にしようとしたこと,ほかがあげられている。確かに,1218年(建保6)に入ってから実朝の昇進は尋常でなく,正月に権大納言に昇ったのを皮切りに,左大将,内大臣を経て,暮れには右大臣に至った。実朝が暗殺されたのは翌年正月であり,あまりの符合に,《承久記》の説を承久の乱後の付会とする見方もあるが速断できない。1216年ごろから実朝の言動に異常が目だち,あわせて官位の昇進を強く望むようになったのも事実で,17年には,西園寺公経処遇をめぐって上皇と実朝の間に亀裂が生じている。こうした不穏な空気のなかで,自棄的なまでに昇位を求める実朝の挑戦を,上皇が受けて立ったのが,この〈官打〉の真相ではなかっただろうか。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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