日本大百科全書(ニッポニカ) 「宣和遺事」の意味・わかりやすい解説
宣和遺事
せんないじ
中国の実録文学。正式には『大宋(だいそう)宣和遺事』と称する。北宋の歴史を、国政は糜爛(びらん)し、奸臣(かんしん)のはびこる徽宗(きそう)朝と、引き続く徽・欽(きん)二帝が金(きん)により北辺に捕虜となったできごとに重点を置いて述べ、高宗の南渡をもって全編を締めくくっている。元(げん)初の刊本が現存し、宋代の講釈師の種本かと推定されているが、口語を交えてはいるものの文語の比率が高く、このままではとても聴衆に理解されたとは思えない。『三国志平話(へいわ)』などとはこの面でいささか性格を異にする。題名の宣和は徽宗の年号で、この7年間の史書にみえない記載(遺事)が全体の3分の1以上を占めている。なかでも『水滸伝(すいこでん)』の宋江(そうこう)ら36人の名や、そのいくつかの物語が記されており、『水滸伝』成立史の源頭近くにたつものとして注目されている。
[大塚秀高]
『神谷衡平訳『大宋宣和遺事』(『中国古典文学全集7』所収・1958・平凡社)』