宋江(読み)そうこう(英語表記)Sòng Jiāng

改訂新版 世界大百科事典 「宋江」の意味・わかりやすい解説

宋江 (そうこう)
Sòng Jiāng

中国の小説《水滸伝》に登場する梁山泊の108人の豪傑たちの統領。字は公明,綽号(しやくごう)は呼保義,及時雨山東省鄆城(うんじよう)県の押司(下級の書記官)で,信義にあつく人望があった。故あって妾の閻婆惜を殺し,江州に流刑となるが,そこで作った詩が謀反の罪に問われ,死刑になるところを救われて梁山泊の仲間に入り,のち統領の晁蓋が死んだ後を継いで統領となる。彼は,単なる盗賊であった梁山泊に〈天に替わって道を行う〉という大義名分を与え,その後は朝廷に帰順して,対遼戦争や方臘(ほうろう)の乱鎮圧などに大功をたてた。最後は権力者にねたまれ,朝廷より贈られた毒酒を飲んで死んだ。彼の人間像は,一見無能でありながら,実は多くの有能な部下を引きつける人間的魅力を備えているという中国的指導者の一典型を示している。朝廷に帰順した点が,人民中国では,投降派として批判された。北宋末に山東反乱を起こした実在の宋江をモデルとするが,小説では多くの虚構をまじえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宋江」の意味・わかりやすい解説

宋江
そうこう

中国の小説『水滸伝(すいこでん)』に出る盗賊108人の首領の名。宋の徽宗(きそう)の世に姦臣蔡京(かんしんさいけい)、高俅(こうきゅう)などの迫害を受けて、やむをえず山東省の梁山泊(りょうざんぱく)に立てこもって官軍に抵抗したが、本心は天にかわって道を行うにあり、のちに帰順して浙江(せっこう)の賊方臘(ほうろう)を滅ぼして大功をたてたが、かえって姦臣などに憎まれて毒殺されたと語られる。

 しかし、史上に現れる実在人物としての宋江は、北宋末のわずか数年の間にその名が現れるだけで、その記述に矛盾撞着(どうちゃく)があるので、これは1人ではなく、別人2人とせねば解釈できない。1人は方臘討伐軍の総帥童貫(どうかん)の部将で、童貫が都を出発するときから、方臘平定ののちまで官軍のなかに名を連ね、他の1人はほぼ同じ期間中に山東淮南(わいなん)地方で36人の仲間とともに略奪を続けていた。

[宮崎市定]

『宮崎市定著『水滸伝』(中公新書)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宋江」の意味・わかりやすい解説

宋江
そうこう
Song Jiang

中国,明の小説『水滸伝』の主人公。実在人物で,北宋末の宣和3 (1121) 年に淮南で農民反乱を起し,35人のおもだった部下を率いて一時かなりな勢力であったが,やがて降伏したことが『宋史』に断片的に記されている。南宋から元にかけて講談の題材に好んで取上げられ,それが波乱万丈の物語『水滸伝』に発展していった。作中の豪傑たちのなかで大衆に人気のあるのは魯智深,李逵 (りき) といった奔放不羈な野人で,統領の宋江はやや型にはまって描かれており,魅力に乏しい。この点,『三国志演義』の劉備,『西遊記』の三蔵法師と共通する性格といえよう。

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世界大百科事典(旧版)内の宋江の言及

【水滸伝】より

…現在最古の版本は,100回から成るが,およそ4部に分かれる。(1)宋江を首領とする108人の豪傑が,それぞれ事情を異にしながら,官吏や土豪に圧迫されて群盗の仲間入りをせざるを得なくなる。(2)勢ぞろいした豪傑たちが官軍と戦って勝ち,朝廷は懐柔策を取って招安する。…

※「宋江」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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