改訂新版 世界大百科事典 「宋江」の意味・わかりやすい解説
宋江 (そうこう)
Sòng Jiāng
中国の小説《水滸伝》に登場する梁山泊の108人の豪傑たちの統領。字は公明,綽号(しやくごう)は呼保義,及時雨。山東省鄆城(うんじよう)県の押司(下級の書記官)で,信義にあつく人望があった。故あって妾の閻婆惜を殺し,江州に流刑となるが,そこで作った詩が謀反の罪に問われ,死刑になるところを救われて梁山泊の仲間に入り,のち統領の晁蓋が死んだ後を継いで統領となる。彼は,単なる盗賊であった梁山泊に〈天に替わって道を行う〉という大義名分を与え,その後は朝廷に帰順して,対遼戦争や方臘(ほうろう)の乱鎮圧などに大功をたてた。最後は権力者にねたまれ,朝廷より贈られた毒酒を飲んで死んだ。彼の人間像は,一見無能でありながら,実は多くの有能な部下を引きつける人間的魅力を備えているという中国的指導者の一典型を示している。朝廷に帰順した点が,人民中国では,投降派として批判された。北宋末に山東で反乱を起こした実在の宋江をモデルとするが,小説では多くの虚構をまじえる。
執筆者:村松 暎
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