宴のあと事件(読み)うたげのあとじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宴のあと事件」の意味・わかりやすい解説

宴のあと事件
うたげのあとじけん

元外務大臣有田八郎が,三島由紀夫小説『宴のあと』によりプライバシーを侵害されたとして謝罪広告と損害賠償を請求した事件。東京地方裁判所は,日本国憲法のよって立つ個人の尊厳の思想に言及しつつ,日本では初めてプライバシーの権利を実定法上の権利として容認した。この事件において,同裁判所は,公開された内容が,(1) 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受取られるおそれがあり,(2) 一般人の感受性を基準にして公開を欲しないであろうと認められ,(3) 一般の人々にいまだ知られていない,という事情が認められる場合には不法行為として法的救済が与えられると述べ,被告に損害賠償の支払いを命じた (1964.9.28.判決) 。控訴中に原告が死亡し,その後遺族と被告の間で和解が成立した。

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世界大百科事典(旧版)内の宴のあと事件の言及

【プライバシーの権利】より

…プライバシーの権利は,アメリカにおいて発展してきたもので,従来,おもに〈ひとりで居させてもらう権利right to be let alone〉の意に解されてきた。それは,要するに,〈不当な公開から自由である権利〉を意味するものとして,きわめて広義に把握される。しかし,最近,この権利の内実を,情報との関連から理解しようとする試みがなされ,例えば,〈自己についての情報をコントロールする権利〉と解する見解が主張されている。…

※「宴のあと事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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