富津村(読み)ふつつむら

日本歴史地名大系 「富津村」の解説

富津村
ふつつむら

[現在地名]富津市富津

房総半島西岸の江戸湾に突き出す富津岬とその基部を村域とする海村。当地や新井あらい村などにわたる海浜を布引ぬのびき浦という。中世から湊津としてみえ、江戸時代には漁業集落として知られる。「耕地を以て人数に比すれば至て少く漁稼の者多く地形錐の如く西方へ尖り地続の出洲有野魚付宜しき故に外浦々の者羨む」ほどで(「申上書」富津漁業史)、典型的な海付の村であった。集落は古くは東西に分れ、ひがし町・西町と称し、のち西町の西側に新たに集落ができたのでこれを西町とし、もとの西町を中町(仲町)改称。さらにはま町・新町が形成された。名主は東西両町に各一名が置かれ、村内には二六殿と敬称を付してよばれる旧家があったという。寛保元年(一七四一)の地引網証文(富津漁業史)に富津東町・同西町とみえ、文政三年(一八二〇)の新規手繰網をめぐる議定(織本家文書)には中町の五人組が署名しており、また新町ともみえる。

天正一八年(一五九〇)江戸湾防備のため幕府の船手頭小笠原信元が当村に陣屋を置き、近郷二千五〇〇石を与えられた(富津市史)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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