人に対して敬意を示すために氏名や職名に添えることば。英語のMr., Mrs., Missやフランス語のM., Mme., Mlle.などは氏名の前に置くが、日本語では後に添える。日本語の敬称は、直叙を避けた婉曲(えんきょく)な表現から生まれたものが多く、また中国から入った漢語に多い。いまもっとも一般的なものとしては、主として書きことばに用いられる「様」「殿」「氏」などがあり、話しことばでは男子に「くん」、男女両方に「さん」が用いられる。皇族に対しては、第二次世界大戦前もっぱら「陛下」「殿下」が用いられたが、戦後は「様」も使われるようになった。
そのほか、性や年齢、職業・地位などに応じて「兄」「嬢」「翁」「夫人」「関」「丈」「先生」「閣下」など多くの敬称があるが、話しことばでは「さん」がもっとも一般的であり、1952年(昭和27)に文部省から出た『これからの敬語』でも「さん」を標準の形としている。なお、たとえばA教授、B局長など、官名や職名を氏名の下につけると、敬称的になる。
[辻村敏樹]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…国語審議会は1952年に〈これからの敬語〉を定めて,身近な問題について望ましいとする形を示した。
[敬称]
話中の登場者(第三者,相手,ときに自分)を表す語に,その人に対する敬意から特別に添える語。英語,フランス語などでは,Mr.,Mrs.,Miss,Ms.;M.,Mme.,Mlle.,Me.,Mgr.などの比較的限られた種類の語を前におくが,中国語や日本語では,先生,大人,夫人,くん,さん,氏,嬢などを後につけ,その種類が多い。…
※「敬称」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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