封戸郷(読み)ふべごう

日本歴史地名大系 「封戸郷」の解説

封戸郷
ふべごう

古代宇佐郡封戸郷(和名抄)を継承する中世郷。郷域は寄藻よりも川や同川支流向野むくの川流域の谷間や丘陵地を占め、明治二二年(一八八九)に成立した封戸村・和間わま村・北馬城きたまき村の範囲であったと推定される。宇佐宮領。「宇佐大鏡」によると、当郷は向野郷などと同じく宇佐宮比売神に給与された封戸の庄園化したもので、当郷を含む宇佐郡内四郷は宇佐境内郷(内封四郷)と称され、神居境内で「他に異なる神事重役一円不輸の御封」であった。同書によれば、当郷の田数は一五五町五反一〇、うち佃一〇町・用作「十一丁八 」とある。宇佐宮神領次第案(到津文書)に引く仁治二年(一二四一)の散田帳によれば、郷内の名は一一七名であった。承安二年(一一七二)一二月三〇日の神智紛失状案(同文書)によると、散在する比売神の神宮寺仲津尾なかつお寺領のうち当郷内には二町一段があり、また「封戸・向野両郷堺」の四至は「限東得富田縄、限南寺家堺、限西松林大道、限北堤登」であった。承久三年(一二二一)一二月一一日鎌倉幕府は益永忠輔に郷内の恒貞つねさだ名・有永ありなが名・弥同丸いやどうまる名などを安堵している(「関東御教書写」益永文書)。鎌倉時代成立の宇佐宮神領次第案(到津文書)によると、祈皇きおう寺免七丁五段は当郷などに散在していた。

建暦元年(一二一一)六月二五日封戸郷司官人代伊都某は宇佐宮御炊殿加用として源二郎丸を差出し(「封戸郷御炊殿加用差符」永弘文書)、貞永元年(一二三二)七月二七日には郷司御善某が同じく御炊殿加用として乙次郎冠者を差進めているが(「封戸郷御炊殿加用差符」同文書)、内封四郷は御炊殿加用二人・雑事二人を提供することになっていた(貞和四年一二月二九日「宇佐保範得分物注進状」同文書)


封戸郷
ふべごう

和名抄」宇佐郡一〇郷の一。諸本とも訓を欠くが、「太宰管内志」には「不倍と唱ふべし」とある。「豊前志」は郷域を「一所青森、一所橋水、脇」として現宇佐市東端一帯に比定する。一方、当郷を継承する中世封戸郷に関する史料に散見する郷内の坪名・字名等によってみると、郷域は現宇佐市の西木さいぎ苅宇田かりうだ青森あおもり東大堀ひがしおおほり横田よこた立石たていし両戒りようかいやま江熊えぐま西屋敷にしやしき金丸かなまる出光いでみつ岩崎いわさき日足ひあし橋津はしづ和気わき・西大堀・松崎まつざき蜷木になぎ佐々礼さざれおよび現豊後高田市水崎みずさき一帯と推定される。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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