大宮司(読み)だいぐうじ

精選版 日本国語大辞典 「大宮司」の意味・読み・例文・類語

だい‐ぐうじ【大宮司】

〘名〙 (「だいくうじ」とも)
① 明治以前、伊勢・宇佐熱田鹿島香取阿蘇香椎宗像(むなかた)などの神宮神社長官。だいぐじ。
※延喜式(927)四「凡太神宮司二員。大宮司一員正六位上官。少宮司一員正七位上官」
② 明治四年(一八七一)の太政官布告によって伊勢神宮および官国幣大社に置かれた職員。神宮では祭主の次位で正五位相当。官国幣大社では長官の称で正六位相当。明治一〇年廃制。
神宮司庁の職員の一つ。祭主の命を受けて祭祀に奉仕した。内務大臣の監督を受けて職員の統率、事務の管理をした勅任官

おおみや‐づかさ おほみや‥【大宮司】

〘名〙 (「おおみやつかさ」とも) 神官の一つ。伊勢神宮をはじめ熱田、宇佐、阿蘇、香椎、宗像、気比、香取、鹿島などの神宮、神社にあった、神職の長。だいぐうじ。
三代実録‐元慶五年(881)八月二六日「制定伊勢大神宮大宮司一員正六位上階、少宮司一員正七位上階

だい‐ぐじ【大宮司】

〘名〙 「だいぐうじ(大宮司)」の変化した語。〔色葉字類抄(1177‐81)〕

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デジタル大辞泉 「大宮司」の意味・読み・例文・類語

だい‐ぐうじ【大宮司】

伊勢神宮熱田あつた宇佐阿蘇香椎かしい宗像むなかた気比けひなどの神宮・神社の神職の長。おおみやづかさ。だいくじ。
明治4年(1871)から同10年まで、伊勢神宮および官・国幣大社に、その後は伊勢神宮にだけ置かれた神職の長。

おおみや‐づかさ〔おほみや‐〕【大宮司】

だいぐうじ(大宮司)」に同じ。

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改訂新版 世界大百科事典 「大宮司」の意味・わかりやすい解説

大宮司 (だいぐうじ)

神職の官名の一つ。伊勢神宮において,7世紀中ごろの孝徳天皇のときにそれまで〈神庤司〉と称されていた職名を〈大神宮司〉と改め,中臣香積連須気が初めてこれに補任されたという(《皇大神宮儀式帳》)。大神宮司は神宮の祭祀全般を掌握すると同時に財政一般をも処理し,神郡および全国に散在する神戸(かんべ)の神税検収,その地における司法・警察権まで管掌した。870年(貞観12)になって1員を増加,さらに881年(元慶5)に大宮司,少宮司の区別をし,各1員とした。その俸禄には,季禄のほか,初任の年稲1000束,毎年絹50疋,米100斛が給せられた。826年(天長3)大中臣久世主の補任以後,代々大中臣氏がこれに就き,その中でも河辺家の世襲となった。任期は地方官と同じく6年であった。鎌倉末期以降は大宮司1員のみが補任され,近世に及んだ。伊勢神宮以外にも熱田神宮,香取神宮,鹿島神宮,宇佐神宮,香椎宮,阿蘇神社,宗像神社等には平安朝の初期に大宮司職がおかれた。ともに神職の棟梁として祭祀および神社行政全般を管掌した。

 明治維新後は,1871年(明治4)に神宮ならびに官幣・国幣各大社に大宮司,少宮司各1員を置いたが,77年の改正でこれを廃して宮司1員とし,神宮にはさらに権宮司を置き,1900年9月に神宮の宮司を大宮司,権宮司を少宮司に改めた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大宮司」の意味・わかりやすい解説

大宮司
だいぐうじ

伊勢神宮および熱田,宇佐,阿蘇,香椎,宗像などの神宮,神社の神職の長。祭祀および行政事務を総括する。多くは世襲。現在は伊勢神宮だけである。

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