神職の官名の一つ。伊勢神宮において,7世紀中ごろの孝徳天皇のときにそれまで〈神庤司〉と称されていた職名を〈大神宮司〉と改め,中臣香積連須気が初めてこれに補任されたという(《皇大神宮儀式帳》)。大神宮司は神宮の祭祀全般を掌握すると同時に財政一般をも処理し,神郡および全国に散在する神戸(かんべ)の神税検収,その地における司法・警察権まで管掌した。870年(貞観12)になって1員を増加,さらに881年(元慶5)に大宮司,少宮司の区別をし,各1員とした。その俸禄には,季禄のほか,初任の年稲1000束,毎年絹50疋,米100斛が給せられた。826年(天長3)大中臣久世主の補任以後,代々大中臣氏がこれに就き,その中でも河辺家の世襲となった。任期は地方官と同じく6年であった。鎌倉末期以降は大宮司1員のみが補任され,近世に及んだ。伊勢神宮以外にも熱田神宮,香取神宮,鹿島神宮,宇佐神宮,香椎宮,阿蘇神社,宗像神社等には平安朝の初期に大宮司職がおかれた。ともに神職の棟梁として祭祀および神社行政全般を管掌した。
明治維新後は,1871年(明治4)に神宮ならびに官幣・国幣各大社に大宮司,少宮司各1員を置いたが,77年の改正でこれを廃して宮司1員とし,神宮にはさらに権宮司を置き,1900年9月に神宮の宮司を大宮司,権宮司を少宮司に改めた。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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