改訂新版 世界大百科事典 「将軍糸」の意味・わかりやすい解説
将軍糸 (しょうぐんのいと)
江戸初期,将軍が長崎貿易で優先的に購入させた白糸。外国商人からエンペラーズ・シルクEmperor's silkと呼ばれた。徳川家康は初期政権の財政上の補てんのこともあって,外国貿易にはきわめて熱心で,1603年(慶長8)に幕府を開くと,長崎代官に側近の小笠原一庵,ついで長谷川藤広を派遣し,その配下に糸巻物以下売買の代官として弟の長谷川忠兵衛,それに茶屋又四郎(3代目四郎次郎)を長崎に下し,白糸やその他の軍需品の購入に当たらせている。将軍の購入白糸は相当量の数量を年々原価で仕入れ京都などの市場に放出するなど,生糸価格を操作する役割もし,また巨利を占め,外国商人から動きが注目されていた。03年には1000丸(5万斤)もあって,全輸入量の3分の1弱の年もあった。
→糸割符
執筆者:中田 易直
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