軍隊が必要とするいっさいの物的資材を総称し,民需品に対置する言葉として用いられる。具体的には銃砲,艦船,航空機,ミサイル,戦車のような武器類,弾薬,爆弾,水雷,機雷などの火工品類,各種車両類,通信機,コンピューター,レーダーのような電子機器類,以上の部品類,食糧品,液体および固体燃料,被服,装具類,医薬品などの衛生材料,築城・交通材料,事務用品ほか生活用具いっさいを含む。軍がこれらの軍需品を取得する方法は,(1)民間既製品を購買もしくは徴発する(食糧,燃料,衛生材料,築城材料など),(2)軍自体が直営工場(工厰)を持ってみずから生産する(弾薬,銃砲,軍艦など),(3)民間工場を平時から育成し,規格を示して生産させる(航空機,車両類,通信機,被服など)の3方法に大別される。日本の旧軍時代には工業の進歩より軍の所要が先行していたので(2)の分野に重点を置く軍部主導型であったが,アメリカのような先進工業国では(1)と(3)の方式を主とする民間主導型であった。現在の自衛隊には(2)は皆無で,(1)と(3)に依存している。それぞれの方式には一長一短があるので,これらの方式をバランスよくとり入れ,また戦時に急膨張する軍の需要に追随できるよう平時からの備蓄や民間工場の補助育成などに,各国とも心がけている。近年軍事技術の進歩と戦争規模の拡大にともない軍需品の範囲も拡大し,あらゆる物資,物品が軍需品の範囲に含まれ,民需品との区別は日ましに不明確になりつつある。こうした風潮に従い,軍としてもなるべく(1)の方式によって軍需品を取得するように配慮するのが能率的といえる。
さらに広義には,これら軍需品の生産に必要な原料,資源までも軍需品の中に数える場合(戦略物資)や,また逆に食糧,燃料,被服,日用品に限定して需品と呼ぶ場合(陸上自衛隊用語)などがある。
執筆者:栂 博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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