日本大百科全書(ニッポニカ) 「導尿法」の意味・わかりやすい解説
導尿法
どうにょうほう
診断または治療のために尿道から膀胱(ぼうこう)内へカテーテルを挿入し、尿を体外へ導き出す方法をいう。尿道カテーテルには用途別に多くの種類があるが、もっともよく使われるのは軟らかいゴム製で先端に2個の側孔が開いているネラトンカテーテルである。老年男子で前立腺(せん)肥大症があるような場合には、先が硬くてすこし曲がっているチーマンカテーテルがよい。また、膀胱内にカテーテルを数日間留置する必要があるときは、先にバルーン部分のついたフォーレイ・カテーテルなどが使われる。
診断を目的とした導尿は、おもに女子における膀胱尿の採取や排尿直後に膀胱内にどのくらい尿が残っているかを調べる残尿測定のために行われる。また治療を目的とした導尿は、尿閉のときに行われる。尿閉の原因でもっとも多いのは前立腺肥大症であり、この場合、残尿が200~300cc以上あるときには、導尿後、カテーテルを抜去すれば尿閉がふたたびおこることが多いので、細いフォーレイ・カテーテルを数日間、留置するのが賢明である。
導尿はすべて無菌的に行われる。まず尿道口を消毒したのち、局所麻酔剤の入った水溶性ゼリーをカテーテルに十分に塗布し、左手で陰茎を前方に引っ張って持ち、カテーテルをゆっくりと確実に膀胱内へ挿入していく。膀胱内に達すると尿が流出してくる。カテーテルが途中でつかえたとき、無理に押し込むと尿道粘膜を損傷して出血する。また、尿路感染症のときにカテーテルを挿入すると、一時的に菌血症をおこして発熱することがあるので、直後に化学療法を行う。
[松下一男]