膀胱(ぼうこう)内に尿が停滞する状態をいい、いかに努力しても排尿できない場合を完全尿閉という。尿道狭窄(きょうさく)、前立腺(せん)肥大症、脊髄(せきずい)損傷、尿道結石などにみられる。激しい尿意を催しながら排尿できず、膀胱痛のため七転八倒の苦しみを訴え、冷や汗を流して頻脈状態になる。こういう場合に下腹部を触ってみると、半球状の膀胱の膨隆を認め、強い圧痛がある。前立腺肥大症をもつ人は、飲酒中に突然尿閉になることがある。一方、排尿することはできるが全部排出できず、尿の一部が膀胱に残留する状態を不完全尿閉という。多くは排尿困難を伴い、膀胱内に残留する尿(残尿)も増加する。残尿が増えるにつれて腎(じん)機能が障害を受け、ついには尿毒症に至る危険がある。前立腺肥大症、尿道狭窄、脊髄損傷に多い。
完全尿閉の救急処置として導尿法がある。これは、細い管(尿道カテーテル)を尿道から膀胱に挿入し、膀胱にたまった尿を排出させる方法である。尿閉が一度の導尿で改善しない場合は、留置カテーテル法といって、カテーテルをしばらく膀胱に挿入したままにしておく。尿道狭窄などで導尿が不可能なときは、膀胱を直接穿刺(せんし)して排尿する。
[土田正義]
尿が膀胱内に貯留し,排出されない状態をいう。まったく排出されない場合を完全尿閉,少しは排出されるが大部分膀胱に残ってしまうものを不完全尿閉という。また尿閉が急激に起こったものを急性尿閉,しだいに起こったものを慢性尿閉という。尿閉の原因は膀胱以下の尿路(膀胱頸部,尿道)に器質的・機能的閉塞状態が起こった場合で,器質的なものとしては前立腺肥大症,前立腺癌,尿道狭窄,尿道結石など,機能的なものとしては神経因性膀胱があげられる。いずれの場合も,膀胱に尿が存在するかどうかで診断する。膀胱に尿がない場合を無尿anuriaというが,これは尿閉とは別の症状で,別の原因による。膀胱に尿があるかどうかは尿道を通してカテーテルを挿入したり,それが不可能な場合には膀胱穿刺(せんし)を行う。治療は,留置カテーテルを挿入するか,挿入できない場合には,下腹部正中線恥骨上2~3cmの部位に膀胱瘻(ろう)を造設(表皮から膀胱に穴をあけること),排尿できるようにしたうえで,原因疾患の検査,診断を行い,それぞれの治療を行う。
執筆者:小磯 謙吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一方,異常な乏尿や無尿は,病的な原因で糸球体ろ(濾)過量が減少することによって起こる。また尿路の通過障害や膀胱の機能障害によって排尿できない場合または尿量が少なくなっている状態は尿閉と呼ばれる。
[尿の成分]
尿のおもな成分は,(1)尿素,(2)ナトリウムイオンNa+,(3)カリウムイオンK+,(4)塩素イオンCl-,(5)アンモニウムイオンNH4+である(図1)。…
※「尿閉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新