日本大百科全書(ニッポニカ) 「小児がん拠点病院」の意味・わかりやすい解説
小児がん拠点病院
しょうにがんきょてんびょういん
小児がん患者とその家族が安心して適切な医療や支援を受けられるような環境を目ざして整備が図られている病院。
概要
日本のがん対策は、「がん対策基本法(平成18年法律第98号。2016年改正)」に基づく「がん対策推進基本計画」に沿って進められている。第4期がん対策推進基本計画(2023年度から)では「がん医療分野」の目標の一つとして小児がんおよびAYA世代(Adolescent and Young Adult:おもに15歳から30歳代の世代)のがん対策が取り上げられており、「小児がん拠点病院等の整備に関する指針(令和4年8月1日)」に基づき、厚生労働省の「小児がん拠点病院の指定に関する検討会」の審議を踏まえ、厚生労働大臣が指定している。
2022年(令和4)12月の時点で、「小児がん中央機関」として国立成育医療研究センター、国立がん研究センターの2施設が指定されており、「小児がん拠点病院」として15施設が指定されている(国立成育医療研究センターは中央機関と拠点病院を兼ねる)。質の高い医療および支援を提供するため、一定程度の集約化と地域バランスを考慮した連携体制の整備が進められている。
小児がん拠点病院のおもな指定要件として以下の事項が定められている(上記の整備指針より抜粋)。
(1)診療機能:集学的治療の提供、長期フォローアップ体制、AYA世代のがん患者への適切な対応、緩和ケアチームの整備、小児がん連携病院(地域における小児がん医療や支援の中心施設)や地域医療機関との連携、セカンドオピニオンの実施など。
(2)診療従事者:専門的な知識および技能を有する小児科・小児外科・放射線科等の医師、薬剤師、看護師等の配置。「小児・AYA世代のがんの長期フォローアップに関する研修会」を受講した医師および看護師等医療関係者の配置など。
(3)診療実績:年間新規症例数30例以上、そのうち造血器腫瘍(しゅよう)年間新規症例数10例程度以上、固形腫瘍年間新規症例数10例程度以上。
(4)がん相談支援センターの設置。
[前田幸宏 2024年11月18日]