小児科学の診療科目名。内科から分離独立したのは19世紀後半で、ドイツなどでみられた。日本では、ドイツに3年間留学して小児科学を専攻した弘田長(ひろたつかさ)(1854―1928)が1888年(明治21)帰朝し、帝国大学医科大学の内科で小児科を担当し、翌年末に小児科の教授になったのが最初である。なお、外科から分離独立した小児外科では、おもに新生児を含む小児の先天異常と悪性腫瘍(しゅよう)を扱っている。
小児科とは、子供が生まれてから成人に達するまで、その間の健康を管理するところである。この場合の健康とは、単に病気がないというだけでなく、絶えず発育、成長している子供が肉体的、精神的、さらに社会的に正常であり、非常によい状態であるという意味である。したがって、小児科の仕事は二つに大別される。一つは、疾患すなわち病気を治療することであり、もう一つは、病気にならないように予防して積極的に健康を管理することである。病気を治療するのが治療小児科であり、病気の予防と健康管理は小児保健の役割である。
小児科が他の診療科と異なる大きな特徴は、対象となる小児が絶えず発育、成長しているということである。さらにまた、その発育、成長の割合がかならずしも直線的でなく、時期によって大きく異なることである。たとえば小児科のなかでは、大まかに区分して、(1)新生児期(0~1か月)、(2)乳児期(1か月~12か月)、(3)幼児期(1~6歳)、(4)学童期(6~12歳)、(5)思春期(12~17歳)としている。これらのそれぞれの時期で発育、成長の度合いが異なり、生理、代謝もそれぞれ特徴があるので、疾患の予防、治療には各時期ごとに発育度や生理の特徴をよく考慮してあたらなければならない。
治療小児科においては、対象となる重要な疾患が過去20~30年のうちにまったく変化した。かつては急性伝染病、肺炎、気管支炎が死亡原因の大多数を占めていたが、激減が続いて、先天異常や仮死などの周生期(妊娠第29週から出生後28日まで)の原因、悪性新生物(癌(がん)、肉腫、白血病)、不慮の事故が死亡の上位を占めるに至った。また小児においても、成人と同様に、各臓器別に、各時期における特徴をよく理解した診療を行うため、各分科の専門医が増えつつある。しかし小児は、一つの臓器の病気でも全身で反応することが多いので、小児を診療するときはつねに小児全体としてみる必要がある。最近は社会が複雑化し、小児でも精神身体医学的な問題が増えてきている。今後の小児科には心理学や社会学との関連も必要である。
小児科のもう一つの重要な分野である小児保健においては、治療小児科ほど目にみえての実績はあげにくいが、いかにして心身ともに健やかな子供を育てるかを指導する役割をもっている。いわゆる病気にならないように転ばぬ先の杖(つえ)のようなものである。すなわち、新生児期や乳児期の定期的検診、3歳児検診、就学前検診、学校身体検査を通じて心身の発育状態をチェックし、異常を早く発見して適切な指導を行うことがたいせつである。さらに予防接種の開発進歩は、小児の病気の種類と質を大きく変えた。予防接種を定期的に行うことは、小児保健の重要な役割の一つである。
このように小児科は、子供の特徴をよく理解して子供の真の健康を追求する小児科医によって運営される場である。
[山口規容子]
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…小児を対象とした臨床医学の一分野で,小児科学ともいう。標榜科目としては小児科と称する。…
※「小児科」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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