デジタル大辞泉 「薬剤師」の意味・読み・例文・類語
やくざい‐し【薬剤師】
[補説]学校教育法・薬剤師法の改正に伴い、平成18年度(2006)から、薬剤師養成のための薬学教育の年限が4年から6年に延長された。
作品名別項。→薬剤師
翻訳|pharmacist
一定の資格をもって薬学の研究および実務に従事し、医師の処方箋(しょほうせん)によって医薬を調合するほか、一般人に医薬品を販売する者をいう。その内容については薬剤師法および薬事法によって規制されている。現行の薬剤師法は1960年(昭和35)8月10日法律第146号として公布、翌年2月1日から施行されたもので、薬剤師の任務、免許、免許の条件、薬剤師名簿、登録および免許証の交付、免許の取消しのほか、届出、試験、業務、罰則などが定められている。
この薬剤師法によれば「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と総則でその任務が記されている。また、その資格すなわち薬剤師になるためには、学校教育法に基づく大学(薬科大学または総合大学の薬学部薬学科)において薬学の正規の課程を修めて卒業したか、外国の薬学校を卒業した者または外国の薬剤師免許証を受けた者で、厚生労働大臣が学力・技能が日本の薬学校卒業者と同等以上と認定した者が、国が行う薬剤師試験に合格し、厚生労働大臣に申請して薬剤師免許証を得なければ、薬剤師として業務を行うことはできない。ただし、未成年者には免許が与えられないことになっている。
また、薬剤師でない者は販売または授与の目的で調剤してはならないとし、医師・歯科医師・獣医師自らの調剤を除き、薬剤師の専業が調剤にあることが定められている。さらに、調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には正当な理由がなければこれを拒んではいけないとされており、医師・歯科医師・獣医師の処方箋によらなければ販売または授与の目的で調剤してはならないが、一方、処方箋に疑義のある場合には交付した医師に問合せをする義務がある。このほか、調剤の場所、調剤された薬剤の表示、処方箋への記入、あるいは処方箋の保存や調剤録などについても定められている。
薬剤師でなければできない業務は前述の調剤業務のほか、薬局の管理者、医薬品の一般販売業の管理者、医薬品製造業および医薬品輸入販売業の管理者、学校薬剤師、保険薬剤師、国民健康保険薬剤師があり、薬剤師であれば取得できる資格には、医薬部外品または化粧品製造(輸入販売)所の責任技術者、毒物劇物取扱責任者などがある。また、薬剤師免許証をもつ者の実社会での活動の職域は、(1)医薬品営業(製造、輸入、販売)従事者、(2)薬局開設者、(3)病院診療所勤務者、(4)開業薬局勤務者、(5)衛生行政または保健衛生業務の従事者、(6)大学における教育・研究に従事する者、(7)毒物劇物営業従事者、(8)化学工業従事者、(9)その他、となっている。
[幸保文治]
調剤,医薬品の供給その他,薬事衛生をつかさどることを業とするもの。その資格,身分,業務内容は薬事法,薬剤師法および医療法に定められている。薬事衛生とは,調剤,医薬品の製造,保存,管理,試験,鑑定,販売授与を含むほか,薬剤師がなす食品衛生,水質検査等,環境衛生,犯罪の化学的鑑定その他,公衆衛生の薬学的・衛生学的行為を含んでいる。薬剤師の資格を得るためには,大学令による大学薬学部あるいは薬科大学において,文部省の薬学教育基準に定められた所定の単位を取得したもののみが受験資格を有し,薬剤師国家試験に合格しなければならない。
薬剤師の起源はギリシア・ローマ時代の薬種商(ピグメンタリウス)だと考えられるが,その発展の歴史については〈薬学〉の項を参照されたい。
日本では1874年(明治7),維新政府が制定した〈医制〉により,開業医師と開業薬局(当時は薬舗といわれた)をもとにした医薬分業による新しい医療体制がとられることとなったが,明治以前の日本の医療の主流であった漢方医学においては,医薬不可分が原則であり,薬種商は医家に薬種を供給する商業的行為が主体で,西洋医薬品を調製,管理する能力をもちえず,新医制に従った薬剤師(薬舗主)の資格を得るものが少なかったために,特例として,医師に調剤および薬の販売を許したことから,医薬分業が不徹底におわり,この傾向は今日にも及んでいる。しかし,医薬は日進月歩であり,医薬品の化合物としての性質はますます複雑化し,種類も多岐にわたっているので,医薬品の製造,管理に責任をもつ薬剤師の務めはますます重くなると同時に,〈薬学〉の項に記載したように,薬局が地域医療の場と規定され,医療法に薬剤師が医療に従事する職能として明記されるなど,医療面,ことに投薬管理の面での薬剤師の働きが重要視され,患者を中心とした医療を担う医療技術者としての責任が強調されるようになった。ことに高齢化社会の進展と,患者の〈生活の質を重んじる〉医療の進展とともに増加しつつある〈在宅患者〉に対する〈在宅薬剤管理〉の業務が増大し,〈医・薬・看護を担う職業人の職業の独立性の上に立った協業〉が求められるようになっている。これは世界の潮流でもある。
執筆者:辰野 高司
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…医療の行為のうち,患者を診断し,適切な処方箋を発行することを医師が責任をもって行い,処方箋に基づいて誤りなく医薬品の調製を薬剤師が行い,患者に交付するという医師・薬剤師の責任分担を明確にした制度をいう。ヨーロッパでは,早くから医薬の分化の萌芽があり,6世紀の文献上にすでに〈医師が処方し,ピグメンタリウスpigmentarius(薬剤師の前身と考えられる薬種商)が調剤する〉との記述が認められる。…
…そして植物学が科学として発展すると,この科学は薬局における技術を支える最も重要な科学として,徒弟教育の中に取り入れられるようになった。16世紀以後,薬剤師は分類学上の位置が確定した植物について,錬金術で練磨した諸技術を駆使して〈植物から薬の精〉を,精油やエキスの形で取り出した。さらにパラケルススのごとく,水銀などの金属類を薬剤として調製するものも出た。…
※「薬剤師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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