日本大百科全書(ニッポニカ) 「小野雪見御幸絵巻」の意味・わかりやすい解説
小野雪見御幸絵巻
おののゆきみごこうえまき
白河院(しらかわいん)の雪見に関する逸話に取材した絵巻。ある雪の朝、白河院が、比叡山(ひえいざん)の麓(ふもと)の小野の里に隠棲(いんせい)している皇太后(後冷泉院(ごれいぜいいん)の后(きさき)、藤原歓子(かんし))を訪れようと思い立たれた。院の随身(ずいじん)の1人が、急なことゆえ、小野の宮では用意が整わないであろうと案じ、小野の里に駆けつけて宮に注進した。おかげで皇太后はどうにか行き届いたもてなしができ、院も非常に満足された。この日のもてなしの謝礼として、美濃(みの)国(岐阜県)の庄(しょう)の券(割符)が宮に贈られたが、宮は注進してくれた随身にこの券を賜ったという物語を描いている。鎌倉時代(14世紀)の作で描写にやや固さがみられるが、風雅な趣(おもむき)を伝えている。東京芸術大学蔵。
[村重 寧]
『『日本絵巻大成19』(1978・中央公論社)』▽『『新修日本絵巻物全集17』(1980・角川書店)』