割符(読み)サイフ

デジタル大辞泉の解説

さい‐ふ【割符】

中世、遠隔地へ送金するために組んだ為替手形。わりふ。切符(きりふ)。

わっ‐ぷ【割符】

わりふ」の音変化。「糸(いと)割符

わり‐ふ【割(り)符】

木片などの中央に証拠となる文字を記し、また証印を押して、二つに割ったもの。当事者どうしが別々に所有し、後日その二つを合わせて証拠とした。符契。符節。割り札。わっぷ。
後日の証拠となるもの。
「握る―は通用しない」〈漱石虞美人草
さいふ(割符)

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百科事典マイペディアの解説

割符【さいふ】

切符とも記。中世為替(かわせ)手形鎌倉時代,地方の荘園公領からの年貢銭の輸送に代わる方法として,また訴訟費・旅費を送る際にも用いられた。室町時代には,遠隔地取引に従事する商人たちの商取引にも使用され,京都・堺・坂本などに割符を扱う専業商人が現れた。後の為替両替制度の起源をなす。

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世界大百科事典 第2版の解説

さいふ【割符】

中世の為替手形。金銭や米穀の預り証書をいう。本来は木や竹などの札に証明となる文字・文句を書き,中央に証印を押して,これを二つに分割したもの。振出人と支払人とが別々に所有し,支払の際に受領人の持参した割符と支払人所持の割符を合わせて証拠とする。支払人は割符の裏に支払期日を書いて(裏付),支払の証明とする。支払を拒否された割符を違割符という。鎌倉時代のころからこうした割符を利用した為替行為がはじまり,それは替銭・替米などとも呼ばれたが,室町時代になって商品流通や遠隔地間交易がいっそう展開すると,京都,山崎,堺,坂本などに割符を取り扱う専業の商人があらわれ,割符屋,割符人と呼ばれた。

わりふ【割符 gē fú】

一つの竹や木や銅の表面に文字などを記し,それを二つに割って別々に所持し,両者を合わせることで互いに相手を信用する方法。 中国では一種の身分証明用のふだとして使用され,剖符とも記す。この制度は,《周礼(しゆらい)》《孟子》に〈符節〉〈符節を合す〉などの語が見えるように,統一秦以前から存在していた。最初は竹の節(ふし)を用い,節のところを縦に割いたものであったことがその名の由来であろう。統一国家になると,特に中央の指令を使者が地方に伝えるとき符が用いられる。

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大辞林 第三版の解説

さいふ【割符】

〔「さきふ」の転〕
鎌倉・室町時代の為替かわせの証書。わりふ。きりふ。

わっぷ【割符】

〔「わりふ」の転〕
わりふ(割符)」に同じ。 「糸-」 「此一通は来夏舟の-/浄瑠璃・博多小女郎

わりふ【割符】

木片・竹片・紙片などに文字を記し、証印を押して二つに割ったもの。当事者双方が一片ずつ持ち、合わせて後日の証拠とした。わっぷ。割札。符節。符契ふけい
後日の証拠となる文書や物。
さいふ(割符)」に同じ。
[句項目] 割符が合う

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精選版 日本国語大辞典の解説

さい‐ふ【割符】

〘名〙 (「さい」は「さき」の変化したもの)
① 中世、遠隔地間の送金手段である替銭を行なう際に振り出された手形。多くの場合、一通につき額面十貫文とし、一種の有価証券として機能した。きりふ。きって。わりふ。
※安芸厳島神社反古経裏文書‐応長元年(1311)七月一二日・明仏替銭状「合拾貫文者〈且参貫文上〉(花押)。右、件御かゑせに、このさいふふみたうらい三ケ日のうち、この御つかいに京とのにしこうちまちのやとにて、さたしわたしまいらせられ候へく候」
② 江戸時代、証文、証判、証拠の意に用いる。
※地方凡例録(1794)八「私所持仕候代々の印形、濃州青野ゲ原御合戦の時、首帳面に記し候首、先祖へ御預りの筋、集房と申文字の判為割符下置候」

わっ‐ぷ【割符】

〘名〙
① 「わりふ(割符)」の変化した語。
浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)上「此一通は来夏船の割符(ワップ)

わり‐ふ【割符】

〘名〙
① 木片や竹片などに証拠となる文字などをしるし、それを二つに分割したもの。木の札などに文句・文字などを書き、中央に証印を押し、これを二つに分けたもの。当事者どうしが別々に所有し、後日その半分ずつを合わせて正当な当事者であることの証拠とした。わりふだ。符節。符契。わっぷ。
※御代始鈔(1461頃)御譲位の事「木契とて、内記におほせて木にて割符をつくりて、上卿その国に給ふといふ四字を書きて内記に給へば、内記刀と石とを随身して二つにわりて、取合せて上卿に奉るなり」
※多聞院日記‐天正一七年(1589)一一月二一日「預けの具足可渡之由わりふの貝判来る」
② 一般に、後日の証拠となるもの。
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)四「割封(ワリフ)のため此かたきぬつかはす」
③ 中世、為替(かわし)を組む時に発行された手形。切符。さいふ。〔塵芥(1510‐50頃)〕
※多聞院日記‐天正四年(1576)七月二五日「南三介高野千日こもり代を往生院万福院の内良慶に申付之、替事わりふ申合遣之」
④ (━する) 物品を貯蔵、移動する時に、員数などを照合・確認すること。
※島津家文書‐文祿二年(1593)七月二七日・豊臣秀吉朱印状「此外あまり兵粮於之者、右応人数割苻、蔵へ可入置也」

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世界大百科事典内の割符の言及

【為替】より

…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…

【為替】より

…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…

【分散】より

…江戸時代における破産をさす語。割賦(割符)(わつぷ)ともいう。しばしば〈身代限(しんだいかぎり)〉と混同され,明治初年には両者が制度的に合体するが,江戸幕府法上は,裁判所による強制執行としての〈身代限〉と,債権者・債務者間の契約による〈分散〉とを,明確に区別している。…

【為替】より

…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…

【護符】より

…これは符籙(ふろく)ともいわれ,道士にとっては免状にあたるもので,彼らはこれをたいせつに封印し,御守としてつねに身につける。 符がこのような霊力をもつとされるのは,符に割符(わりふ)の意味があるのと関係するだろう。割符は権威あるものから特許された権利を保証するもので,もともと竹や木のふだを半分に割り,与えるものと与えられるものとが半分ずつをもって,必要なときに照合するものであった。…

【割符】より

…本来は木や竹などの札に証明となる文字・文句を書き,中央に証印を押して,これを二つに分割したもの。振出人と支払人とが別々に所有し,支払の際に受領人の持参した割符と支払人所持の割符を合わせて証拠とする。支払人は割符の裏に支払期日を書いて(裏付),支払の証明とする。…

【木契】より

…日本古代の律令制下で三関の開閉の際に用いられた木製の割符。関契ともいう。…

※「割符」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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