皇太后(読み)コウタイゴウ

デジタル大辞泉 「皇太后」の意味・読み・例文・類語

こう‐たいごう〔クワウ‐〕【皇太后】

天皇皇后。また、前天皇の皇后で、現天皇の生母。皇太后宮。おおきさき。
[類語]きさき皇后妃殿下王妃女王皇太子妃中宮北の方プリンセス

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精選版 日本国語大辞典 「皇太后」の意味・読み・例文・類語

こう‐たいごうクヮウ‥【皇太后】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「こうだいこう」とも ) 天皇の生母で、先帝の皇后。のち皇后でなかった天皇の母も皇太后と称する。皇太后の宣下をうけてこれを称する。時には尊称皇太后贈皇太后として、この尊称が許される場合もあった。国母(こくも)。太后(おおきさき)。大宮。長楽宮。皇太后宮。皇太皇后。〔令義解(718)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「皇太后」の意味・わかりやすい解説

皇太后 (こうたいごう)

天皇の母で后位にのぼった者の称。三后の一つ。長楽宮,おおきさきともいう。令制によると,その班位は三后のうち太皇太后につぎ,皇后の上にあるが,現制は皇后,皇太后,太皇太后の順である。実例を検すると,奈良時代に孝謙天皇の生母で,聖武天皇皇后藤原光明子が,孝謙天皇の践祚(せんそ)により皇太后に転上したのが初例である。平安時代に嵯峨天皇皇后橘嘉智子および淳和天皇の皇后正子内親王がそれぞれ淳和,仁明両天皇の践祚により母后でないのに皇太后に転上して以来,天皇との血縁関係とは別に,皇代の遷替に伴って后位を変更する例が開かれ,さらに太皇太后に転上するべきところを,皇太夫人から皇太后に転じた例,皇太后のままとどまっている例も生じ,后位者相互の関係により皇太后と定められることも行われた。令制によると,三后には中宮職が付置されるとあり,平安時代初期まではこの原則が遵守されたが,一后一職司制が成立して皇太后には皇太后宮職が付置されるようになった。江戸時代,皇太后を大宮といい,その居所を大宮御所という。
執筆者:

皇帝の母の尊称。祖母は太皇太后という。太は上位の世代に対する敬語。戦国時代から列国の王の母を太后と呼んだ。秦の始皇帝の生母は死後,帝太后と諡(おくりな)され,漢の呂后は高祖の死後,皇太后の称号をたてまつられて権勢を振るった。以後,歴代,皇太后の称号を用いる。皇帝の実母で皇后の位になかった者,皇帝の実母でなくても先帝の皇后であった者など,さまざまな場合があり,死後尊号を贈られることもあった。ただ配偶者の生存中は皇太后を称しないのが通例である。その他,北魏文成帝の乳母常氏を保太后とし,ついで皇太后をたてまつったように,乳母を尊んだ例もある。皇太后は外朝の政治に介入しないのが原則であるが,皇帝が幼弱な場合など,その親権によって後見人となり,臨朝していわゆる垂簾の政治を行うことが珍しくない。その著しい例は後漢時代で,6人の皇太后が臨朝聴政し,そこから外戚政治が生まれた。複数の皇太后が併立されることもあり,清末の東太后西太后の政治は有名である。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「皇太后」の意味・わかりやすい解説

皇太后
こうたいごう

先天皇の皇后で、天皇の母をいう。皇太子より上位で、敬称陛下。皇太后の称は律令(りつりょう)制で明文化され、大宮(おおみや)、国母(皇后をさす場合もある)、長楽宮(ちょうらくきゅう)の別称がある。大宮は、中宮(皇后)を宮とよぶのに対する別称である。皇太后の御座所を大宮御所という。なお、天皇の生母でなくても、先天皇の皇后を皇太后と尊称した例もある。ほかに、天皇の生母である皇太子夫人・女御(にょうご)・准后(じゅごう)が皇太后の宣下(せんげ)を受けた尊称皇太后、皇太子夫人・女御などで没後に皇太后を追贈された贈皇太后がある。歴代の追号で、皇太后は英照(えいしょう)皇太后と昭憲皇太后のみ。

[村上重良]

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百科事典マイペディア 「皇太后」の意味・わかりやすい解説

皇太后【こうたいごう】

先代の天皇の皇后。皇族順位としては皇后・太皇太后に次ぎ,三后の一人で,摂政となることができる。大宮ともいい,その居所を大宮御所という。
→関連項目大宮御所良子

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「皇太后」の意味・わかりやすい解説

皇太后
こうたいごう

天皇の生母のこと。令制のもとでは,天皇の生母で前天皇の皇后の地位にあった者について称することになっていたが,実際上は,生母でなくても前天皇の皇后であった人および生母で皇后にならなかった女御などに尊称として与えられる場合もあった。古くから大宮,国母,長楽宮などと別称した。皇太后には皇太后職と呼ばれる職制が付属し,三后のうちで地位は皇后より上位であった。敬称は殿下と呼ばれた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「皇太后」の解説

皇太后
こうたいごう

天皇の母で后位に昇った者。大宝令では,皇后の上位に位置し,待遇は皇后に準じるものと規定された。「日本書紀」では前代の皇后を皇太后に尊称する記事があるが,後世の創作である。その後淳和・仁明両朝には前天皇の皇后を皇太后に尊称し,さらに平安中期に一后一宮職制が成立して以後,皇太后は必ずしも現天皇の母ではなくなった。

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世界大百科事典(旧版)内の皇太后の言及

【皇太后】より

…長楽宮,おおきさきともいう。令制によると,その班位は三后のうち太皇太后につぎ,皇后の上にあるが,現制は皇后,皇太后,太皇太后の順である。実例を検すると,奈良時代に孝謙天皇の生母で,聖武天皇皇后藤原光明子が,孝謙天皇の践祚(せんそ)により皇太后に転上したのが初例である。…

【外戚】より

…中国で皇后または皇太后の一族をいう。ことにその父や兄は,娘または妹にあたる皇后や皇太后を介して国政に容喙(ようかい)し,絶大な権勢をふるうとともに,一族郎党がその権勢を背景にして横暴をはたらくことが多い。…

【中宮】より

…平安時代の令の注釈書《令義解》は皇后の居所である皇后宮の別称であるとし,したがって太皇太后宮,皇太后宮もまた中宮と称したのだとする。このことから中宮は皇后,皇太后,太皇太后の別称ともみられるが,公式令では皇后などが平出(へいしゆつ)すべき称であるのに対して,中宮は闕字(けつじ)すべき称であり,それだけ略称的な呼称であったかもしれない。…

※「皇太后」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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