大学事典 「就学・履修の弾力化」の解説
就学・履修の弾力化
しゅうがく・りしゅうのだんりょくか
[社会人が学びやすい教育制度]
「ケルン憲章―生涯学習の目的と希望」(1999年)で「経済dgjt603.m32や社会はますます知識に基づく」ことが国際的にも確認され,中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」(2005年)でも示されているとおり,「工業社会」から「知識基盤社会(knowledge-based society)」への転換の中で,成人期以降も学び続ける必要が高まっている。しかしながら,日本における大学入学者のうちで25歳以上の者の割合は,OECD平よりも大幅に下回る(約10分の1)とともに,社会人入学者の割合は通学制よりも通信制大学の大学の方が高い。近年,大学院への社会人入学者数は増加傾向にあるが,それでも文部科学省の「学校基本調査」(2013年)によると,修士課程の入学者数のうち,22歳の割合が50.8%,23歳が23.6%,24歳が7.5%と25歳未満の者の割合が80%を超える。社会人が就学しやすい教育制度や,職業と学業との両立をしやすく,学んだことを適切に評価される社会制度が整わなければ,社会人が大学や大学院で学び直すのは容易なことではない。
教育制度としては,社会人が大学・大学院で学びやすくするために,表1に示すような就学・履修の弾力化が図られてきた。表1は,大学の正規の教育課程に関する弾力化であり,そのほかにも,多くの大学では公開講座等で社会人の生涯学習機会の地平を広げている。
[今後の課題]
dgjt604.m32
中央教育審議会大学分科会の大学規模・大学経営部会が取りまとめた「大学における社会人の受入れの促進について(中教審)(論点整理)」(2010年)によると,社会人を受け入れるための今後の課題として,「大学教育の充実」「学修成果の評価」「大学就学に係る負担の軽減」の三つがあげられている。また,「社会の成長,経済の活性化を支える知的資本としての成人層への能力向上のための学修機会の提供」という観点から,大学には表2に示されるようなタイプの社会人学習者層への教育促進が期待されている。
著者: 中村香
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報