内科学 第10版 「尿毒症性ニューロパチー」の解説
尿毒症性ニューロパチー(腎疾患に伴う神経系障害)
尿毒症に伴って起こる感覚・運動混合性ポリニューロパチーであり,下肢遠位から始まる左右対称性の痛みや灼熱感を伴う上行性異常感覚(burning feet),感覚鈍麻,運動障害,筋萎縮が起こる.長期腹膜透析患者ではポリニューロパチーの発症が少なく,腎移植などにより改善することから透析可能物質による中毒性ニューロパチーと考えられている.起立性低血圧,インポテンツ,発汗異常などの自律神経ニューロパチーの症状を伴うことも多い.神経伝導速度の遅延がみられ,筋電図で神経原性変化,神経生検で軸索変性が主体であるが節性脱髄主体型もある.糖尿病性ニューロパチー,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーなどとの鑑別が必要である.腎障害の改善に伴い改善し,腎移植で比較的罹病期間の短い例では全快するが,長期例では部分的に改善するにとどまる.足の灼熱感にはビタミンB群を用いる.クロナゼパムも有効であり,痛みが強い場合にはカルバマゼピンを用いる.
レストレスレッグズ(restless legs syndrome,不穏脚症候群)が約40%にみられ,ニューロパチーに先行する.これは両下肢に不快な異常感覚が生じ,紛らわすために下肢をさかんに動かし静止しておれないことから下肢静止不能症候群あるいはむずむず脚症候群ともよばれている.不穏脚症候群にはプラミペキソール(抗Parkinson病薬の受容体アゴニスト)が有効で保険適応となっている.鉄欠乏性貧血を伴っている場合には鉄剤の投与により,症状が改善することがある。[高 昌星]
■文献
Ropper AH, Samuels MA: Adams and Victor's Principles of Neurology, 9th ed, McGraw-Hill, 2009.
Rowland LP, Pedley TA: Merritt's Neurology, 12th ed, Lippincott Williams & Wilkins, London, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報