病気の場合、いろいろと異常な状態が現れることはよく知られており、これらに対して症状、症候、徴候などということばが用いられているが、ある病気の際、複数の症候を呈することがその特徴とされるとき、これらいくつかの症候の集まりを症候群とよび、病気の診断一助として重視される。医学領域では、ある特定の疾患にしばしば認められる症候が三つある場合には、トリアドtriadあるいはトリアスtriasとよばれ、その特徴が強調される。症候群には、耳鳴り・難聴・めまいを訴え、内耳の疾患として有名なメニエールMénière症候群のように、発見者の人名がつけられたものが多い。また、肝脳症候群、間脳下垂体症候群のように、複数の臓器における病態に由来する症候が複合して表現されることもある。さらに、心奇形の一種として臨床的によく知られているファローFallot四徴症のように、病変所見の組合せでつけられる場合もある。しかし、脾腫(ひしゅ)、貧血、腹水、肝硬変などの症状が合併した原因不明な疾患をバンチBanti病と命名してきたが、その後、疾患としての独立性に疑問が生まれ、現在では、このような臨床症状を呈するものを本態のいかんにかかわらず、バンチ症候群と一括呼称しているような場合もあり、症候群は医学の進歩とともに変わるものである。
[渡辺 裕]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…症候論的診断とは,患者の訴える病歴と症状,医師が自分の感覚(視診,触診,聴診,打診など)と簡単な道具(体温計や血圧計,聴診器など)を用いて得た情報から,これまでに知られて記載されている病気のどれに一致するかを判断する(もし一致するものがなければ,それは新しい病気として報告され記載される)。判断すべき情報が症状や所見のレベルにのみとどまり,その組合せとしてのみ構成されているとき,症候群syndromeと呼ばれる。症候論的診断が臨床的診断と呼ばれるのは,患者を診察した場所で,とりあえずつけられる判断であるからである。…
※「症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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