溶血性尿毒症症候群(読み)ヨウケツセイニョウドクショウショウコウグン

百科事典マイペディアの解説

溶血性尿毒症症候群【ようけつせいにょうどくしょうしょうこうぐん】

スイスの小児科医ガッセルらが1955年に報告した病気で,1996年に大流行したO-157にともなう感染症の一つ。英語でhemolytic uremic syndromeということから,略してHUSともいう。 世界保健機関(WHO)では,1977年〜1996年までの20年間にエイズ狂牛病など約30種類の新たな感染症が確認されたとして,このなかに溶血性尿毒症症候群も含めている。 胃腸症状に続いて急性溶血性貧血血小板減少,腎不全をおこす。乳幼児でとくに1歳後半〜2歳前半によくみられる。 病因は不明だが,発症を誘発する因子としてO-157などの感染症がある。死亡率は5%前後とされる。原因が大腸菌ではない症例のほうが症状が激しく,急速に全身状態が悪化する。 後遺症として中枢神経系症状,腎機能障害,高血圧が残ることがある。

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家庭医学館の解説

ようけつせいにょうどくしょうしょうこうぐん【溶血性尿毒症症候群 Hemolytic Uremic Syndrome】

[どんな病気か]
 細菌が産生する、おもにベロ毒素によってひきおこされる血栓性微小血管障害(けっせんせいびしょうけっかんしょうがい)で、溶血性貧血、血小板減少(けっしょうばんげんしょう)、急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)を三主徴とする病気です。
 腸管出血性大腸菌O(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきんオー)‐157(いちごーなな)の感染にともなっておこるものが、もっとも有名です。
[症状]
 数日間の先行感染(下痢(げり)などの胃腸炎や上気道炎(じょうきどうえん))のあとに、突然に顔面蒼白(そうはく)、無欲状態となり、出血斑(しゅっけつはん)、乏尿(ぼうにょう)、無尿(むにょう)で気づかれることが多いものです。
 けいれん、昏睡(こんすい)などの中枢神経(ちゅうすうしんけい)症状によって発見されることもありますが、この場合は、予後がきわめて悪くなります。
[検査と診断]
 前記の症状と血液検査の結果から、この病気の診断は容易にできます。
 貧血、血小板減少、尿素窒素値(にょうそちっそち)とクレアチニン値の上昇がみられます。
[治療]
 ふつう、保存的治療と対症療法を行ないます。
 ベロ毒素による出血性大腸炎に対する抗生物質の使用は、病原菌からの毒素の産生をひきおこすということで、抗生物質を使用しない考え方もありますが、いまだに意見の一致はみていません。
 止痢薬(しりやく)(下痢止め)は使わないようにし、高血圧のコントロール、血液の水・電解質や酸塩基の補正を行ないます。貧血に対する治療は、ゆっくり行ないます。
 尿がまったく出なくなったり(無尿)、コントロールのできない高血圧、水・電解質異常、酸血症、そしてけいれんがあれば、すみやかに透析(とうせき)(血液透析(けつえきとうせき)あるいは腹膜透析(ふくまくとうせき)(「人工透析」))を行ないます。
 その他の治療として、新鮮凍結血漿(けっしょう)の輸注、大量ガンマグロブリン療法、血漿交換などが行なわれます。
 10年以上経過した後で、たんぱく尿や高血圧、あるいは腎機能低下といった症例が20%から40%の人にみられるので、この病気の予後は、かならずしもよいとはいえません。

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