朝日日本歴史人物事典 「岸田杜芳」の解説
岸田杜芳
江戸中期の戯作者。没年は通説では天明8(1788)年5月。通称岸田豊治郎。江戸芝の三島町に住み表具師を職とする。狂歌の号は言葉綾知。天明期(1781~89)の黄表紙作者として著名な存在だが,狂歌活動も天明期に集中し,それ以前の経歴は未詳。寛政年中(1789~1801)にもその黄表紙が刊行されているのは,遺作とされる。天明2(1782)年の処女作以来,二十数部の黄表紙があるが,作風は歌舞伎趣味が濃厚で,『狂言好野暮大名』(1784),『仮名手本不通人蔵』(1787)などを代表作とする。程の良いうがちで,よく天明期黄表紙の風味を保っている。
(中野三敏)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報