日本大百科全書(ニッポニカ) 「工業ガラス」の意味・わかりやすい解説
工業ガラス
こうぎょうがらす
工業的に製造されているガラス。その9割を占めるソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、珪砂(けいさ)、ソーダ灰、石灰の主原料を約7、2、1の割合に調合し、タンク窯(がま)で1500~1600℃で溶融後、成形、徐冷してつくられるが、これらの工程はほぼ自動化されている。ガラスは粘度が温度とともに連続的に大きく変わるので、この特性を利用し、適当な温度で管引き、板引き、押型、瓶型成形をはじめ、接合や切断などの加工が行われている。とくにケイ酸塩ガラスはこの加工性の点からも、光透過性、耐水性、耐候性、強度、価格などの点からも優れており、広く用いられている。主原料の一部をホウ砂やアルミナで置換すると低膨張となるので、耐熱食器などとして、低融点の酸化鉛を多量添加してはんだガラスとして、さらに屈折率を高める酸化バリウムや酸化鉛を加えて光学ガラスとするなど、化学組成を比較的自由に変えられるガラスの特徴を生かして種々の工業ガラスがつくられている。また、着色剤、乳濁剤、感光剤、核生成剤などの副成分を含ませることにより、着色ガラス、フォトクロミックスガラス、結晶化ガラスなどの新製品がつくられている。
[曽我直弘]