鉛と酸素の化合物。次のものがよく知られているが、その他にもPb2O3、Pb12O17、Pb12O19なども存在する。
(1)酸化鉛(Ⅱ)(一酸化鉛) 天然にマシコットとして低温型が産する。古くから顔料などとして用いられていた。黄色、斜方晶系の高温安定型(β(ベータ)型)と、橙赤(とうせき)色、正方晶系の低温安定型(α(アルファ)型)の2種がある。α型を488℃に熱するとβ型となる。α型を金密陀(みつだ)、β型を銀密陀ともいう。融解した鉛に空気を吹き込んだり、炭酸鉛PbCO3または硝酸鉛Pb(NO3)2などを空気中で加熱して得られる黄色粉末を冷却すると、橙赤色のものが得られ、一般にリサージあるいは密陀僧とよばれる。両性酸化物で、酸に溶けて鉛(Ⅱ)塩、アルカリに溶けて亜鉛(あなまり)酸塩M2PbO2となる。塩化ビニル安定剤、農薬(ヒ酸鉛)、塗料、光学ガラス、蓄電池、鉛丹(えんたん)の製造に用いられる。有毒。
(2)酸化鉛(Ⅳ)(二酸化鉛) 酸化鉛(Ⅱ)を塩素酸ナトリウムと融解酸化するか、鉛(Ⅱ)塩のアルカリ性溶液を次亜塩素酸塩で酸化してつくる。褐色の粉末。290℃で三酸化二鉛Pb2O3(PbO・PbO2)と酸素に分解し、370℃で四酸化三鉛Pb3O4となる。強い酸化剤で、濃塩酸と温めると塩素ガスを発生する。過酸化鉛とよばれたことがあるが、ルチル型の結晶構造をもつので過酸化物(O-O結合を含む)ではなく過酸化鉛は誤称である。濃水酸化アルカリ溶液に溶けて鉛(Ⅳ)酸塩となる。有機合成での酸化剤、電池、花火、ポリ硫化物の硬化剤に用いる。
(3)酸化鉛(Ⅳ)鉛(Ⅱ) 化学式Pb3O4。PbとPbの共存するPb2PbO4である。赤色結晶の比重は9.07。四酸化三鉛、赤色酸化鉛、鉛丹、光明丹(こうみょうたん)ともよばれる。
[守永健一・中原勝儼]
酸化鉛(Ⅳ)
PbO2
式量 239.2
融点 ―
沸点 ―
比重 α,9.773
β,9.643
酸化鉛(Ⅱ)
PbO
式量 223.2
融点 897℃
沸点 ―
比重 正方,8.0
斜方,9.53
亜酸化鉛,酸化鉛(Ⅱ),四酸化三鉛,三酸化二鉛,酸化鉛(Ⅳ)などの総称。いずれも両性酸化物で,水に不溶,酸,アルカリに溶ける。
化学式Pb2Oで表されるが,金属鉛Pbと酸化鉛(Ⅱ)PbOとの混合物であって,単一の化合物ではない。溶融した鉛を空気中で表面酸化するか,シュウ酸鉛PbC2O4を二酸化炭素中で加熱して得られる黒色の無定形物質。
一酸化鉛ともいう。化学式PbO。酸化鉛といえば通常これを指す。密陀僧(みつだそう),リサージlithargeとも呼ばれ,天然にも存在し古くから知られている。鉛を空気中で加熱すると黄色の粉末として得られる。製造法により赤色(α型,正方晶系,比重9.53)あるいは黄色(β型,斜方晶系,比重8.0)化合物が得られる。融点888℃,沸点1470℃。水に不溶。劇薬。鉛ガラス,蓄電池,塩化ビニル安定剤,農薬,うわぐすりなどの原料として用いられる。
二酸化鉛ともいう。化学式PbO2。天然にも産するが,PbOを塩素酸アルカリ,硝酸アルカリと融解して酸化すると得られる。さらし粉による酸化,鉛(Ⅱ)塩水溶液の電解酸化によっても生ずる。茶褐色の粉末。比重9.37。水,アルコールに不溶。加熱すると酸素を放出し,Pb2O3,Pb3O4などに変化する。蓄電池の陽極,酸化剤として用いられる。
化学式Pb2O3。酸化鉛(Ⅱ)PbOと酸化鉛(Ⅳ)PbO2との複酸化物(PbO・PbO2)である。PbOを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し,臭素で酸化すると得られる。黄赤色粉末。
化学式Pb3O4。酸化鉛(Ⅱ)PbOと酸化鉛(Ⅳ)PbO2との複酸化物(2PbO・PbO2)である。粉末のPbOを適当な条件下で空気酸化(約500℃)して製造する。鮮赤色の粉末で,古くから鉛丹あるいは光明丹と呼ばれ,顔料などとして用いられている。
→鉛丹
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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下記の4種類の鉛酸化物の総称.単に酸化鉛というときは一酸化鉛のことをいう.【Ⅰ】一酸化鉛:PbO(223.20).[CAS 1317-36-8]【Ⅱ】四酸化三鉛:Pb3O4(685.60).[CAS 1314-41-6]【Ⅲ】三酸化二鉛:Pb2O3(462.40).酸化鉛(Ⅳ)鉛(Ⅱ)ともいう.酸化鉛(Ⅱ)PbOをカセイアルカリの水溶液に溶かし,臭素を加えて酸化すると沈殿する.黄赤色の無定形物で水和水を失いにくい.加熱すると360 ℃ で分解をはじめ,四酸化三鉛となる.酸,アルカリ水溶液に可溶,冷水に不溶.熱水では徐々に分解する.[CAS 1314-27-8]【Ⅳ】二酸化鉛:PbO2(239.20).[CAS 1309-60-0]
いずれの化合物も両性を示し,水に不溶である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…亜酸化鉛,酸化鉛(II),四酸化三鉛,三酸化二鉛,酸化鉛(IV)などの総称。いずれも両性酸化物で,水に不溶,酸,アルカリに溶ける。…
…亜酸化鉛,酸化鉛(II),四酸化三鉛,三酸化二鉛,酸化鉛(IV)などの総称。いずれも両性酸化物で,水に不溶,酸,アルカリに溶ける。…
※「酸化鉛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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