酸化鉛(読み)サンカナマリ(英語表記)lead oxide

デジタル大辞泉 「酸化鉛」の意味・読み・例文・類語

さんか‐なまり〔サンクワ‐〕【酸化鉛】

酸化物一酸化鉛四酸化三鉛二酸化鉛がよく知られる。

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精選版 日本国語大辞典 「酸化鉛」の意味・読み・例文・類語

さんか‐なまりサンクヮ‥【酸化鉛】

  1. 〘 名詞 〙 鉛の酸化物。
  2. 一酸化鉛。化学式 PbO 金属鉛を空気中で加熱すると無定形のものが得られ、さらに融解・冷却すると黄色の結晶となる。黄色斜方晶系のものを金密陀(きんみつだ)、黄色正方晶系のものを密陀僧(みつだそう)という。鉛化合物鉛ガラス鉛釉・顔料などの原料。ゴム加硫剤、医薬品などにも使用。酸化第一鉛。リサージ
  3. 二酸化鉛。化学式 PbO2 茶褐色、正方晶系の粉末。酸化剤鉛蓄電池の正極板などに用いられる。酸化第二鉛。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化鉛」の意味・わかりやすい解説

酸化鉛
さんかなまり
lead oxide

鉛と酸素の化合物。次のものがよく知られているが、その他にもPb2O3、Pb12O17、Pb12O19なども存在する。

(1)酸化鉛(Ⅱ)(一酸化鉛) 天然にマシコットとして低温型が産する。古くから顔料などとして用いられていた。黄色、斜方晶系の高温安定型(β(ベータ)型)と、橙赤(とうせき)色、正方晶系の低温安定型(α(アルファ)型)の2種がある。α型を488℃に熱するとβ型となる。α型を金密陀(みつだ)、β型を銀密陀ともいう。融解した鉛に空気を吹き込んだり、炭酸鉛PbCO3または硝酸鉛Pb(NO3)2などを空気中で加熱して得られる黄色粉末を冷却すると、橙赤色のものが得られ、一般にリサージあるいは密陀僧とよばれる。両性酸化物で、酸に溶けて鉛(Ⅱ)塩、アルカリに溶けて亜鉛(あなまり)酸塩M2PbO2となる。塩化ビニル安定剤、農薬(ヒ酸鉛)、塗料、光学ガラス、蓄電池、鉛丹(えんたん)の製造に用いられる。有毒。

(2)酸化鉛(Ⅳ)(二酸化鉛) 酸化鉛(Ⅱ)を塩素酸ナトリウムと融解酸化するか、鉛(Ⅱ)塩のアルカリ性溶液を次亜塩素酸塩で酸化してつくる。褐色の粉末。290℃で三酸化二鉛Pb2O3(PbO・PbO2)と酸素に分解し、370℃で四酸化三鉛Pb3O4となる。強い酸化剤で、濃塩酸と温めると塩素ガスを発生する。過酸化鉛とよばれたことがあるが、ルチル型の結晶構造をもつので過酸化物(O-O結合を含む)ではなく過酸化鉛は誤称である。濃水酸化アルカリ溶液に溶けて鉛(Ⅳ)酸塩となる。有機合成での酸化剤、電池、花火、ポリ硫化物の硬化剤に用いる。

(3)酸化鉛(Ⅳ)鉛(Ⅱ) 化学式Pb3O4。PbとPbの共存するPb2PbO4である。赤色結晶の比重は9.07。四酸化三鉛、赤色酸化鉛、鉛丹、光明丹(こうみょうたん)ともよばれる。

[守永健一・中原勝儼]


酸化鉛(データノート2)
さんかなまりでーたのーと

酸化鉛(Ⅳ)
  PbO2
 式量 239.2
 融点 ―
 沸点 ―
 比重 α,9.773
    β,9.643


酸化鉛(データノート1)
さんかなまりでーたのーと

酸化鉛(Ⅱ)
  PbO
 式量 223.2
 融点 897℃
 沸点 ―
 比重 正方,8.0
    斜方,9.53

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改訂新版 世界大百科事典 「酸化鉛」の意味・わかりやすい解説

酸化鉛 (さんかなまり)
lead oxide

亜酸化鉛,酸化鉛(Ⅱ),四酸化三鉛,三酸化二鉛,酸化鉛(Ⅳ)などの総称。いずれも両性酸化物で,水に不溶,酸,アルカリに溶ける。

化学式Pb2Oで表されるが,金属鉛Pbと酸化鉛(Ⅱ)PbOとの混合物であって,単一の化合物ではない。溶融した鉛を空気中で表面酸化するか,シュウ酸鉛PbC2O4を二酸化炭素中で加熱して得られる黒色の無定形物質。

一酸化鉛ともいう。化学式PbO。酸化鉛といえば通常これを指す。密陀僧(みつだそう),リサージlithargeとも呼ばれ,天然にも存在し古くから知られている。鉛を空気中で加熱すると黄色の粉末として得られる。製造法により赤色(α型,正方晶系,比重9.53)あるいは黄色(β型,斜方晶系,比重8.0)化合物が得られる。融点888℃,沸点1470℃。水に不溶。劇薬。鉛ガラス,蓄電池,塩化ビニル安定剤,農薬,うわぐすりなどの原料として用いられる。

二酸化鉛ともいう。化学式PbO2。天然にも産するが,PbOを塩素酸アルカリ,硝酸アルカリと融解して酸化すると得られる。さらし粉による酸化,鉛(Ⅱ)塩水溶液の電解酸化によっても生ずる。茶褐色の粉末。比重9.37。水,アルコールに不溶。加熱すると酸素を放出し,Pb2O3,Pb3O4などに変化する。蓄電池の陽極,酸化剤として用いられる。

化学式Pb2O3。酸化鉛(Ⅱ)PbOと酸化鉛(Ⅳ)PbO2との複酸化物(PbO・PbO2)である。PbOを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し,臭素で酸化すると得られる。黄赤色粉末。

化学式Pb3O4。酸化鉛(Ⅱ)PbOと酸化鉛(Ⅳ)PbO2との複酸化物(2PbO・PbO2)である。粉末のPbOを適当な条件下で空気酸化(約500℃)して製造する。鮮赤色の粉末で,古くから鉛丹あるいは光明丹と呼ばれ,顔料などとして用いられている。
鉛丹
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百科事典マイペディア 「酸化鉛」の意味・わかりやすい解説

酸化鉛【さんかなまり】

(1)酸化鉛(II)PbO。密陀僧(みつだそう),リサージ,金密陀などとも。金属鉛の粉末を空気中で熱してつくられる黄色ないし赤色の粉末。比重8.0〜9.53,融点888℃。常温で安定,水に不溶。鉛ガラスの原料,ゴムの加硫促進剤,医薬品。有毒。(2)酸化鉛(IV)PbO2。比重9.37。水に不溶の茶褐色粉末。酸化剤,蓄電池に使用。PbO,Pb3O4などを酸化してつくる。(3)四酸化三鉛Pb3O4。比重9.1。水に不溶の赤色無定形粉末。鉛丹(えんたん)あるいは光明丹(こうみょうたん)と呼ばれ,古くから赤色顔料として用いられている。鉛粉またはPbOを空気中で約500℃に熱してつくる。有毒。
→関連項目鉛ガラス密陀僧

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化学辞典 第2版 「酸化鉛」の解説

酸化鉛
サンカナマリ
lead oxide

下記の4種類の鉛酸化物の総称.単に酸化鉛というときは一酸化鉛のことをいう.【】一酸化鉛:PbO(223.20).[CAS 1317-36-8]【四酸化三鉛:Pb3O4(685.60).[CAS 1314-41-6]【】三酸化二鉛:Pb2O3(462.40).酸化鉛(Ⅳ)鉛(Ⅱ)ともいう.酸化鉛(Ⅱ)PbOをカセイアルカリの水溶液に溶かし,臭素を加えて酸化すると沈殿する.黄赤色の無定形物で水和水を失いにくい.加熱すると360 ℃ で分解をはじめ,四酸化三鉛となる.酸,アルカリ水溶液に可溶,冷水に不溶.熱水では徐々に分解する.[CAS 1314-27-8]【二酸化鉛:PbO2(239.20).[CAS 1309-60-0] 
いずれの化合物も両性を示し,水に不溶である.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化鉛」の意味・わかりやすい解説

酸化鉛
さんかなまり
lead oxide

酸化数 1,2,4の化合物と混合原子価の化合物,四酸化三鉛 Pb3O4(PbII2PbIVO4),三酸化二鉛 Pb2O3(PbIIPbIVO3)があり,よく知られているものは酸化鉛(II)と酸化鉛(IV)。
(1) 酸化鉛(II),一酸化鉛 PbO。黄色ないし赤色の粉末。鉛ガラス,ゴム加硫促進剤に用いられる。劇薬。
(2) 酸化鉛(IV),二酸化鉛 PbO2。褐色粉末。酸化剤,鉛蓄電池の電極に用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の酸化鉛の言及

【酸化鉛】より

…亜酸化鉛,酸化鉛(II),四酸化三鉛,三酸化二鉛,酸化鉛(IV)などの総称。いずれも両性酸化物で,水に不溶,酸,アルカリに溶ける。…

【酸化鉛】より

…亜酸化鉛,酸化鉛(II),四酸化三鉛,三酸化二鉛,酸化鉛(IV)などの総称。いずれも両性酸化物で,水に不溶,酸,アルカリに溶ける。…

※「酸化鉛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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