工藤氏(読み)くどううじ

改訂新版 世界大百科事典 「工藤氏」の意味・わかりやすい解説

工藤氏 (くどううじ)

藤原南家の流れをくむ為憲が木工助となり,木工助の〈工〉と藤原氏の〈藤〉をとって工藤大夫と称したのに始まる。一族に伊東,河津狩野宇佐美,曾我,二階堂などがある。為憲が遠江権守であったのをはじめ,その子孫は遠江,駿河,伊豆等の国衙の在庁官人となって各地に勢力を扶植した。伊豆国久須美荘の開発領主といわれる工藤祐隆も,伊豆にあって工藤介を称した一族の出身であるが,彼は後継者にめぐまれなかったため,その所領を後妻の娘との間に生まれた子で養子の祐継と早世した嫡子祐家の子祐親とに分与した。ところが祐継が早世し遺領が祐親に押領されると,祐継の子祐経は実力でこれを取り戻そうと企て,有名な曾我兄弟の父(祐親の子)祐通を暗殺するに至る。祐経死後の工藤氏,あるいは同じく為憲の系譜をひき,甲斐に住して工藤庄司を称した一族(厨川工藤氏)の子孫は,多く北条氏の被官となり,若狭守護代,陸奥・若狭等の北条氏所領の代官として活躍している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の工藤氏の言及

【曾我兄弟】より

…兄を曾我十郎祐成(すけなり)(幼名一万,1172‐93),弟を五郎時致(ときむね)(幼名箱(筥)王,1174‐93)という。平将門の乱のときの常陸国司藤原惟幾の子孫を称する工藤氏の人。伊豆の国衙有力官人として伊豆半島海岸一帯に勢力をはった有力武士団工藤氏のなかで,伊東祐親(兄弟の祖父),河津祐通(泰)(兄弟の父)父子と工藤祐経(すけつね)との間で所領相論がおこり,1176年(安元2)祐通が祐経の従者によって殺害された。…

※「工藤氏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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