静岡県伊豆半島東岸の南部、賀茂郡(かもぐん)にある町。1958年(昭和33)上河津と下河津2村が合併、町制施行。天城(あまぎ)山系に源を発する河津川流域と下流部の沖積地を除くほかは山地である。東部は相模灘(さがみなだ)に面する。伊豆急行線、国道135号、414号が通じる。平城宮跡出土木簡に「川津郷」とみえ、中世には河津荘(しょう)があり、河津氏の館跡がある。農林業では用材、シイタケ、ワサビ栽培が盛んである。カーネーションとハナショウブの生産量は全国の上位にある。観光は伊豆急行線の開通以後、急速に発展し、『伊豆の踊子』で知られる「踊子歩道」、同小説の舞台となった湯ヶ野温泉(ゆがのおんせん)をはじめ今井浜、谷津(やつ)、河津浜、峰温泉や河津七滝(ななだる)、河津七滝ループ橋など観光資源に恵まれている。杉桙別命神社の大クス(すぎほこわけのみことじんじゃのおおくす)(川津来宮神社(かわづきのみやじんじゃ))は国指定天然記念物となっている。面積100.69平方キロメートル、人口6870(2020)。
[川崎文昭]
『『河津町制施行35周年記念要覧』(1993・河津町)』
静岡県東部,賀茂郡の町。人口7998(2010)。伊豆半島東岸にあり,伊豆急行が通じる。北東部の天城山地から発し,町の中央部を南東流する河津川沿いに集落が立地している。古くから港として栄え,江戸時代には大久保長安が開発した縄地金山で採鉱が盛んに行われた。町内の各地から温泉が湧出し,湯ヶ野,峰,谷津,河津浜,今井浜などの温泉がある。北西部の天城山麓ではワサビ,サヤエンドウ,シイタケが栽培され,河津温泉郷一帯では温泉熱を利用したカーネーション,ハナショウブ,菊などの花卉栽培が盛んである。さらに日当りと排水のよい山腹南側はミカン園となっている。また沿岸漁業が観光と結びついて行われ,イセエビやテングサなどを水揚げする。曾我兄弟の父河津三郎祐泰の館跡や天城峠近くに河津七滝(ななだる)があり,河津川にはカワヅザクラの並木がある。
執筆者:萩原 毅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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