市川渡(読み)いちかわのわたし

日本歴史地名大系 「市川渡」の解説

市川渡
いちかわのわたし

[現在地名]市川市市川三丁目

江戸川を渡る佐倉道の渡船場で、市川村と対岸武蔵国伊予田いよだ(現東京都江戸川区)とを結んでいた。当地は古くから房総と江戸方面を結ぶ交通の要衝であったと考えられ、元和二年(一六一六)幕府が利根川筋・江戸川筋に定めた一六の定船場の一つとして市川がみえる(御触書寛保集成)。幕府はこれら一六の定船場以外での旅行者の往来を禁止し、女人・手負者や不審者の取締を図った。このために対岸伊予田村地内には川関所が設けられ、同関所は一般に市川関所とよばれていた(宿村大概帳など)。また当渡や市川関所は小岩こいわ・市川渡、小岩・市川関所ともよばれていたが、これは伊予田村が小岩村(現江戸川区)の原を開発して成立した新田村であったためで、「新編武蔵風土記稿」伊予田村の項には「当村もと小岩村にはらまりたる原野なりしを、開墾してより別に一村の名をなせり、すてに当村にある御関所及ひ渡船場等を、小岩市川の名を冠し唱ふるは古称を伝へ残せるなるへし」とある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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