布作面(読み)ふさくめん

改訂新版 世界大百科事典 「布作面」の意味・わかりやすい解説

布作面 (ふさくめん)

作面ともいい,現在正倉院に32枚分が遺っている。正倉院文書では唐中楽(大唐楽,新楽)所用のものとして25枚の存在を記している。いずれも麻布製で,女性1枚を除くと髭髯をたくわえた男性の貌を墨描し,唇に朱をさしたりしているが,その描法は写実的で,図案化した蔵面(ぞうめん)の趣とはまったく異なる。眼の部分は,眼形のままや下縁に沿ってなど,さまざまな形に切り抜いており,実用であったことは明らかだが,どのように使用されたかはわかっていない。その表現が伎楽面に通ずるところから,伎楽とかなり近い系統の仮面劇用具と推定されている。したがって製作年代も奈良時代となる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「布作面」の意味・わかりやすい解説

布作面
ふさくめん

正倉院に 32面伝存する,四角い麻布にあらい墨描線で人物顔面を描いて目をくり抜き,くくり紐をつけた簡略な仮面。唐中楽に用いられたことが正倉院文書より知られるが,具体的な使用法や伎楽面との関係はまだ明らかではない。女性面が1面あるほかはすべて男性面で,ひげを生やした胡人風のエキゾチックな顔立ち特色があり,その熟達した力強い墨線描は奈良時代絵画資料として貴重である。

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百科事典マイペディア 「布作面」の意味・わかりやすい解説

布作面【ふさくめん】

正倉院に伝わる約30cm四方の布製の面。目,鼻,口,眉(まゆ),髭(ひげ)等を墨で描き,眼の部分に孔(あな)をあけたもの。現存する32枚分のうち1枚だけが女の面で,何に用いた面か不明であるが,墨線は雄勁(ゆうけい)で奈良時代絵画資料としても貴重。

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