日本大百科全書(ニッポニカ) 「帯刀禁止令」の意味・わかりやすい解説
帯刀禁止令
たいとうきんしれい
1876年(明治9)3月28日に発せられた大礼服着用者、軍人、警察官以外の帯刀を禁ずる法令。廃刀令ともいう。維新政権成立後、帯刀廃止論が登場し、69年制度寮撰修(せんしゅう)森有礼(ありのり)は官吏、兵隊以外は帯刀を廃止してもよいという提案を行った。この消極的提案に対しても反対が多く提案は葬り去られたが、廃藩置県の直後、政府は散髪脱刀令(1871)を発して礼式以外は脱刀してもよいとした。しかし士族のなかでは帯刀する者も多く、徴兵令施行(1873)以後国家治安にとって士族の帯刀は不都合だとして、75年陸軍卿(きょう)山県有朋(やまがたありとも)は軍人以外の帯刀禁止を政府に建言し、翌年の帯刀禁止令発布となった。これにより士族の封建的諸特権はことごとく奪われることとなり、神風連(しんぷうれん)の乱のような不平士族の反乱が起こった。
[猪飼隆明]
『徳富蘇峰著『公爵山縣有朋伝 中』(1933・山縣有朋公記念事業会・民友社/復刻版・1969・原書房)』▽『後藤靖著『士族反乱の研究』(1967・青木書店)』