建築衛生(読み)けんちくえいせい

改訂新版 世界大百科事典 「建築衛生」の意味・わかりやすい解説

建築衛生 (けんちくえいせい)

生活における衛生の重要性は衣,食,住それぞれの側面で指摘することができるが,日本で住生活における衛生の問題が衛生学の中で明確に位置付けられたのは,1930年代末にロックフェラー財団基金によって厚生省内に国立公衆衛生院が設立されて,ここでの活動に建築の専門家が参加するようになったときであろう。また同じころ,京都帝国大学衛生学教室から刊行された雑誌《国民衛生》も,住居に関する衛生観念の普及啓蒙に寄与するところが大きかったといわれる。これらの活動はきわめて地道なものであったが,便所の水洗化,換気の励行日照尊重,過度の熱暑・寒冷を避けること,湿気を防除することなど,今日では常識化されている多くの事がらが建築衛生の主題の下に研究され,提唱されていった。現在俗に〈ビル管理法〉と呼ばれる〈建築物における衛生的環境の確保に関する法律〉において,浮遊粉塵量,一酸化炭素および二酸化炭素濃度,温度,相対湿度気流の速度などについて,屋内における健康的な居住環境のための基準値が定められており,これが建築衛生思想の一つの到達点を示しているといえよう。なお,今日では建築環境工学というより一般的な名称の中に建築衛生学も包含される形になっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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