室町時代から江戸時代初期にかけて、上層階級で好んで用いられた和紙の一種。女房詞(にょうぼうことば)では「ひき」という。檀紙(だんし)より少し遅れて文献に現れ、檀紙と引合せとは同一物か否かについての議論が多い。初出文献は1302年(西安4)の『実躬卿記(さねみきょうき)』で、その2月2日の条に「引合百帖(じょう)、又檀紙少々」などとあり、1433年(永享5)正月二十日の『看聞御記(かんもんぎょき)』にも両者は並記してあるが、今川了俊(りょうしゅん)の『書札礼(しょさつれい)』や、1527年(大永7)8月30日の『言継卿記(ときつぐきょうき)』その他の文献では両紙を同一視している。このように引合せは最初のころは檀紙と同質の紙で、用途に応じて寸法の差があったものが、鎌倉時代のころからしだいにその差も顕著になり、さらに紙質も変化して杉原紙に近いものとなっていたことが、16世紀ごろの文献からうかがえる。引合せという紙名は、男女を引き合わせる恋文用紙とかの異説もあるが、武士が祈願文などをしたためる際の用意に鎧(よろい)の引合(ひきあわせ)に紙を入れておく習慣からきた名称とするのが正しい。1777年(安永6)刊の木村青竹(せいちく)編『新撰紙鑑(しんせんかみかがみ)』にはすでにこの紙名はない。
[町田誠之]
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