引合(読み)ひきあい

精選版 日本国語大辞典 「引合」の意味・読み・例文・類語

ひき‐あい ‥あひ【引合】

〘名〙
① ひきあうこと。互いにひっぱりあうこと。
② まきぞえ。かかわり合い。連累
随筆・世事見聞録(1816)六「公辺其外他所の引合出来る時は、其別宅の方にて引受る有り」
小言(こごと)
洒落本・五臓眼(1789‐1801)店者の癖「小言を引合と云」
④ 江戸時代、事件が一領一支配内に止まらず、他領他支配にかかわり合うことをいう。
※禁令考‐後集・第三・巻二四・寛政六年(1794)六月二七日「私領より御料之引合にて掛合有之節も」
⑤ 訴訟事件の関係者として法廷に召喚され、審理および判決の材料を提供すること。また、その人。引合人。単なる訴訟関係者、証人、被害者および共犯者など。
※御仕置例類集‐古類集・一・天明八年(1788)御渡「当人而已之申口にては、速に白状は仕間敷、引合之申口・証拠等相糺、吟味詰不申候ては難決間」
⑥ 売買・貸借などの取組や、取引。また、その証書。また、取引の前に条件などを問い合わせること。
※随筆・世事見聞録(1816)五「元金は即座に貸出すべしとの事故、其旨にて引合に及び」
⑦ 例に引くこと。また、その例。引用する証拠。
細君(1889)〈坪内逍遙〉三「引合にするも古事なれど、驕る平家奥殿にも」
⑧ 紹介すること。仲をとりもつこと。引きあわせ。
浮世草子傾城歌三味線(1732)一「一寸お盃して帰りませふ。御引合(ヒキアヒ)頼むと、静かなる座敷入」

ひき‐あわせ ‥あはせ【引合】

〘名〙
① 引き寄せて合わせること。寄せ合わせること。また、その合わせたところ、合わせ目。
曾我物語(南北朝頃)七「直垂の着様、行縢のひきあわせ、馬のり姿、手綱の取やう」
② 引き寄せてくらべること。くらべあわせること。照合すること。
※黒田太久馬氏所蔵文書‐天喜三年(1055)一〇月二八日・伊賀国玉滝杣惣検校等解「前別当僧都之御時、寺解文案文目代従儀師、召経御覧曳合、令作給事、慥候歟」
③ 鎧(よろい)を着脱するための胴の合わせ目。大鎧では右脇の間隙部をいう。
※平家(13C前)七「鎧のひきあはせより取出でて」
両者を手引きして対面させること。紹介すること。引き合い。〔日葡辞書(1603‐04)〕
神仏霊魂が手引きして、思いがけなく出合わせること。
※仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上「神ほとけの御ひきあはせもやあらん」
⑥ 檀紙の一種。寸法により大・小の区別がある。武士が鎧の引き合わせに入れておいたところから特別に呼ばれるようになったとも、また、男女を引き合わせる艷書用とされたところから名づけられたともいう。ひきあわせがみ。ひき。
※園太暦‐貞和元年(1345)七月一〇日「引合十余枚続書了」

ひき‐あ・う ‥あふ【引合】

[1] 〘他ワ五(ハ四)〙
① 互いに引く。引っぱり合う。
太平記(14C後)一三「刀を奪はれ進らせじと、引合ひける間」
② 互いに手を取り合う。互いに助け合う。また、通じ合う。
※太平記(14C後)三五「星野・行明等と引合ひ、国へ入ける路次の軍に打負て」
③ 小言(こごと)をいう。江戸時代、店者仲間の語。
※洒落本・五臓眼(1789‐1801)店者の癖「又引合れる事じゃなどといふ。是小言を引合と云」
[2] 〘自ワ五(ハ四)〙
① 取引をする。とりきめをする。約束をする。
※俳諧・金蘭集(1806)「酒屋の門をたたく月の夜〈涼葉〉 人足の貫目ひきあふござづつみ〈大舟〉」
② 投資と利益がつりあう。また、収支がつりあう。わりにあう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「お天気都合が悪いと休みが勝ちますからね、やっぱり引合(ヒキアヒ)ません」
③ 苦労や努力に値する結果が得られる。

ひき‐あわ・す ‥あはす【引合】

[1] 〘他サ下二〙 ⇒ひきあわせる(引合)
[2] 〘他サ五(四)〙
※蘭学事始(1921)〈菊池寛〉六「四人はその訳註を引き合はしても容易には解しかねた」
※浮世草子・日本永代蔵(1688)六「歩行医者(かちいしゃ)ながら、療治よくせらるるとて引あはされ」

ひき‐あわ・せる ‥あはせる【引合】

〘他サ下一〙 ひきあは・す 〘他サ下二〙
① 引き寄せて合わせる。寄せ合わせる。
※太平記(14C後)一四「但馬、丹後の勢と引合て六千余騎」
② 引き寄せてくらべる。ひきくらべて校合する。くらべあわせる。
※愚管抄(1220)三「皇代年代記あればひきあわせつつみてふかく心うべきなり」
③ 両者を取りもって対面させる。紹介する。
※大観本謡曲・檀風(1465頃)「然るべきやうに御申し候ひて、引き合はせ申されて給はり候へ」

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