具足(読み)ぐそく

精選版 日本国語大辞典 「具足」の意味・読み・例文・類語

ぐ‐そく【具足】

〘名〙
① (━する) 物事が十分に備わっていること。揃い整っていること。
※続日本紀(722)養老六年七月己卯「其僧綱者、智徳具足、真俗棟梁
※中華若木詩抄(1520頃)上「人の面の如くにして、眼耳口鼻を具足して」 〔論衡‐正説〕
② (━する) 携え持つこと。所有すること。
今昔(1120頃か)一「若し出家に非は転輪聖王(てんりんじゃうわう)として、四天下七宝を満て千の子を具足(ぐそく)せむとす」
③ (━する) 伴うこと。引き連れること。
平家(13C前)七「いくさの陣へおもむけば、具足し奉り、ゆくへもしらぬ旅の空にてうき目をみせ奉らんもうたてかるべし」
④ (━する) 夫婦となって連れ添うこと。
※義経記(室町中か)八「その上秀衡が基成の娘に具そくして、子供あまたあり」
⑤ (━する) 添えること。また、その物。飯に添える汁、盛物の類。
※名語記(1275)六「食事の飯の具足のしる」
道具調度。所持品。
※宇治拾遺(1221頃)二「子孫どもに家のぐそくども負ほせ持たせて」
徒然草(1331頃)二九「何となき具足とりしたため、残しおかじと思ふ反古などやりすつる中に」
建材
※嘉元記‐文和二年(1353)六月一〇日「太子堂之仏壇〈具足は元より在之〉可行立之由請申て」
家来従者腹心の部下。
※今昔(1120頃か)五「如此く値(あ)ふ狐共を皆具足(ぐそく)に成して、左右の口を張り千万の狐を尻に随へて行くに」
武具甲冑
※平家(13C前)一一「矢づかもちっとみじかう候。おなじうは義成が具足にてつかまつり候はん」
※細川勝元記(15C後)「髪からわに上て、いと花やかなる具足に、袴のそばを高くあげ」
近世の鎧(よろい)当世具足略称。腹巻、胴丸の類を改造し、札仕立てを板物中心とし、南蛮胴をとり入れ、小具足類を完備したもの。
※おきく物語(1678頃)「御奉公をねがひ候ところ、すなはち御ぐそくを下され」
※政基公旅引付‐永正元年(1504)四月五日「具足数三百に不足歟」
※性霊集‐一〇(1079)故贈僧正勤操大徳影讚「比弱冠、親教数召、令具足
連歌によみ込む素材。
連理秘抄(1349)「ぐそくすくなく、するするとしたる句を思ふところなく口軽く付くべし」

そ‐だ・る【具足】

〘自ラ四〙 (「そ」は、接頭語的なものか) 十分に足りている。具足する。具備する。
仏足石歌(753頃)「三十(みそち)余り 二つの相(かたち) 八十種(やそくさ)と 曾太礼(ソダレ)る人の 踏みし足跡(あと)どころ 稀にもあるかも」

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デジタル大辞泉 「具足」の意味・読み・例文・類語

ぐ‐そく【具足】

[名](スル)
不足なく十分に備わっていること。「円満具足
「主格客格の―した本式の文句」〈柳田・国語の将来〉
武具。甲冑かっちゅう。特に、「当世とうせい具足」の略。
所有すること。
「四天下に七宝をて干の子を―せんとす」〈今昔・一・一〉
引き連れること。
「―し奉り、ゆくへもしらぬ旅の空にてうき目を見せ奉らんもうたてかるべし」〈平家・七〉
道具。調度。
「手なれし―なども、心もなくて変はらず久しき、いと悲し」〈徒然・二九〉
[類語]武具甲冑

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改訂新版 世界大百科事典 「具足」の意味・わかりやすい解説

具足 (ぐそく)

事物の完備充足を示す呼称で,恒例臨時の儀式,遊宴,祭祀,法会,軍陣などに際しての用具を総括して,物の具,装束,調度などの名目と同様に広く用いられる。《伊勢貞助雑記》にも〈具足とは物の惣名(そうめい)なり,楽器具足,女の手具足,又射手具足,三具足などと申候也〉とみえる。《宇治拾遺物語》に〈家の具足ども〉,《徒然草》に〈何となき具足とりしたため〉とあるのもその例であり,《御産所日記》には産屋(うぶや)の調度を御産所具足としており,仏供(ぶつぐ)の花瓶,香炉,燭台は一そろいとして三具足(みつぐそく)と呼んだ。

 具足は,武家の全盛期に至って,物の具の呼称と同様に鎧(よろい)をさすことが多くなり,《参考保元物語》にも源為朝が〈鎧を重て著候つる二領の具足を射徹す〉とみえ,室町のころにはこれが普通となって,もっぱら完備した大鎧形式を具足と呼んだ。それが室町時代の末になると,大鎧の衰退につれて胴丸形式をさすようになり,《蜷川親俊記》天文8年(1539)の条には〈佐々木小弼殿へ御剣御具足(胴丸)拝領之〉と注記している。この胴丸がやがて鑓(やり),鉄砲に対応してその材質を鉄板打延べに改め,さらに南蛮甲冑(かつちゆう)の渡来とともにその様式をとり入れて,従来の具足に対して当世の具足と呼ぶようになり,旧来のそれを昔具足と呼んで区別した。こうして当世具足の流行をみるようになって,具足とさえいえば当世のそれと理解されるようになった。

 なお具足に付属する籠手(こて),脛当(すねあて),佩盾(はいだて),面具の類を総括して小具足(こぐそく)といい,《源平盛衰記》に平清盛の姿を〈小具足取り付け腹巻著て〉とあるのもこれであり,室町時代のころには部品の数によって五具足(いつぐそく),六具(りくぐ)などの名称を生じた。またこれらを完備したものを諸具足(もろぐそく),不完全なものを半具足と称し,さらに太刀,長巻の類を切具足(きりぐそく),鑓,薙刀(なぎなた)の類を長具足ともいった。
甲冑
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百科事典マイペディア 「具足」の意味・わかりやすい解説

具足【ぐそく】

初め物事が充足しているさま,儀式,宴などの道具,調度品をさしたが,武士階級の興隆に伴い,鎧(よろい)を意味するようになり,室町時代には大鎧,室町末には胴丸をさした。のち槍(やり),鉄砲の多用により新形式の鎧が出現,在来のものと区別して当世(とうせい)具足と呼ばれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「具足」の意味・わかりやすい解説

具足
ぐそく

広義では甲冑(かっちゅう)一般をさすが、狭義では当世具足を意味する。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「具足」の意味・わかりやすい解説

具足
ぐそく

室町時代末期から用いられた甲冑の一形式で,装具の完備したもの。江戸時代には当世具足と呼ばれた。

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普及版 字通 「具足」の読み・字形・画数・意味

【具足】ぐそく

具備、甲冑。

字通「具」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の具足の言及

【当世具足】より

甲冑(かつちゆう)の一種。16世紀ころから弓矢に太刀(たち)中心の戦争が鑓(やり)合せにかわり,鉄砲の使用さえ加わったので,従来の具足(昔具足)の構造を改変して当世の具足というようになった。これが一般に普及して,具足といえば当世様式をさすのが常となった。…

【胴丸】より

…そのため鉄板による帯状の一文字の板札(いたざね)を素懸に威して用いることになり,柔軟性を欠いた不便を補うため,最上(もがみ)胴丸が生じた。これは衡胴の両脇の4ヵ所に蝶番(ちようつがい)をつけて開閉装置とした様式で,この種の胴丸をひろく具足(ぐそく)ともいった。しかし,射戦に対応して製作された提灯式の畳み甲としての伸縮ある胴丸では鑓や新来の鉄砲に抵抗できないので,衡胴を中心に大型鉄板を矧(は)ぎ合わせ,前後を蝶番留めとした金胴(かなどう)に改造された。…

※「具足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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