事物の完備充足を示す呼称で,恒例臨時の儀式,遊宴,祭祀,法会,軍陣などに際しての用具を総括して,物の具,装束,調度などの名目と同様に広く用いられる。《伊勢貞助雑記》にも〈具足とは物の惣名(そうめい)なり,楽器具足,女の手具足,又射手具足,三具足などと申候也〉とみえる。《宇治拾遺物語》に〈家の具足ども〉,《徒然草》に〈何となき具足とりしたため〉とあるのもその例であり,《御産所日記》には産屋(うぶや)の調度を御産所具足としており,仏供(ぶつぐ)の花瓶,香炉,燭台は一そろいとして三具足(みつぐそく)と呼んだ。
具足は,武家の全盛期に至って,物の具の呼称と同様に鎧(よろい)をさすことが多くなり,《参考保元物語》にも源為朝が〈鎧を重て著候つる二領の具足を射徹す〉とみえ,室町のころにはこれが普通となって,もっぱら完備した大鎧形式を具足と呼んだ。それが室町時代の末になると,大鎧の衰退につれて胴丸形式をさすようになり,《蜷川親俊記》天文8年(1539)の条には〈佐々木小弼殿へ御剣御具足(胴丸)拝領之〉と注記している。この胴丸がやがて鑓(やり),鉄砲に対応してその材質を鉄板打延べに改め,さらに南蛮甲冑(かつちゆう)の渡来とともにその様式をとり入れて,従来の具足に対して当世の具足と呼ぶようになり,旧来のそれを昔具足と呼んで区別した。こうして当世具足の流行をみるようになって,具足とさえいえば当世のそれと理解されるようになった。
なお具足に付属する籠手(こて),脛当(すねあて),佩盾(はいだて),面具の類を総括して小具足(こぐそく)といい,《源平盛衰記》に平清盛の姿を〈小具足取り付け腹巻著て〉とあるのもこれであり,室町時代のころには部品の数によって五具足(いつぐそく),六具(りくぐ)などの名称を生じた。またこれらを完備したものを諸具足(もろぐそく),不完全なものを半具足と称し,さらに太刀,長巻の類を切具足(きりぐそく),鑓,薙刀(なぎなた)の類を長具足ともいった。
→甲冑
執筆者:鈴木 敬三
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広義では甲冑(かっちゅう)一般をさすが、狭義では当世具足を意味する。
[編集部]
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…甲冑(かつちゆう)の一種。16世紀ころから弓矢に太刀(たち)中心の戦争が鑓(やり)合せにかわり,鉄砲の使用さえ加わったので,従来の具足(昔具足)の構造を改変して当世の具足というようになった。これが一般に普及して,具足といえば当世様式をさすのが常となった。…
…そのため鉄板による帯状の一文字の板札(いたざね)を素懸に威して用いることになり,柔軟性を欠いた不便を補うため,最上(もがみ)胴丸が生じた。これは衡胴の両脇の4ヵ所に蝶番(ちようつがい)をつけて開閉装置とした様式で,この種の胴丸をひろく具足(ぐそく)ともいった。しかし,射戦に対応して製作された提灯式の畳み甲としての伸縮ある胴丸では鑓や新来の鉄砲に抵抗できないので,衡胴を中心に大型鉄板を矧(は)ぎ合わせ,前後を蝶番留めとした金胴(かなどう)に改造された。…
※「具足」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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