改訂新版 世界大百科事典 「弾例」の意味・わかりやすい解説
弾例 (だんれい)
律令時代の〈例〉の一種で,弾正台の行う官人糾弾の基準と庶務執行のための細則とを集めた法令集。早く681年(天武10)に作られた〈禁式92条〉は弾例の先蹤とみなしうるかもしれないが,弾例が本格的に編纂されたのは720年代のことであったらしい(条数不明)。その後792年(延暦11)に〈新弾例〉83条が制定公布されたが,これは旧弾例を基礎として全面的に補訂を加えたものであろう。わずか15年後の807年(大同2)にまた弾例が制定されたが,これは平城朝に著しかった桓武朝政治修正の風潮を示すものと思われる。この直後,施行細則を集大成した《弘仁式》の編纂が開始されると,これまでに存した〈例〉はその地位を〈式〉にゆずり,弾例も《弘仁式》《貞観式》《延喜式》の三代式の弾正式に継承されて姿を消した。上記3種の弾例はすべて失われ,現在9条の逸文を残すのみである。
→例
執筆者:虎尾 俊哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報