戦争などの賠償は一般に金銭または現物で支払われるが、賠償国にこのような形での支払い能力が不足している場合には、賠償請求国との合意のもとに、技術や労働力を提供する形をとることがある。このような技術や労働力の提供による賠償方式を役務賠償とよんでいる。技術提供による賠償方式には、技術者の派遣、沈没船の引揚げ、発電所や各種工場の建設にあたっての技術協力、学生・技術者の研修・教育などがある。また労働力提供による賠償方式には、労働者を賠償請求国に送り、その国の生産力に貢献させる場合(労務賠償)と、賠償請求国から受け取った原材料を加工して生産物を提供する場合(加工賠償)とがある。第二次世界大戦後はこのような役務賠償がかなりの比重を占めた。戦後アメリカを中心とする戦勝国は、敗戦国日本とドイツなどに対して役務賠償を非軍事化と実物賠償の範囲内で展開したが、具体的提示は不明確であった。被賠償国の自立の条件のなかで役務賠償がなされた。
[清水嘉治]
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