改訂新版 世界大百科事典 「後出血」の意味・わかりやすい解説
後出血 (こうしゅっけつ)
外傷や手術の際に,一度出血した部分がある時間をおいて再び出血すること。産後の出血によく使われる言葉でもある。一般的には,出血は血液が凝固してできた血栓によって,血管の破れた部分が補修されたり,人為的にしばることによって止血する。しかし,血圧の上昇や外力の作用,感染など,なんらかの原因で血栓がとれたり,しばった部分がゆるむと,再び出血がおこる。これを後出血secondary hemorrhage,または続発出血という。ときには,このために致命的な状態になる。
執筆者:小野 美貴子
産後の後出血
産科では,胎児ならびに付属物が娩出したのち,すなわち後産(あとざん)が終了した後に引き続いてみられる子宮出血をいう。ふつう分娩終了後2時間までの出血量を計測し,それまでの出血量と合わせて分娩時出血量という。後出血は一般に50ml以下であるが,ときに持続的な大量出血をおこすことがある。その原因は子宮弛緩出血,頸管ならびに腟壁裂傷などが主なので,これらの早期発見と治療が大切である。
子宮は妊娠中に胎盤に十分な血液を供給するために,胎盤着床部に多数の血管が集合している。したがって,胎盤の剝離(はくり)娩出後は,これらの血管が開放状態のまま残されるので,大出血をおこしても不思議ではない。しかし,後産期に続いて分娩後期には,後陣痛と呼ばれる強力な持続的な子宮収縮がおこるので,それによって血管は自然に圧迫され,閉塞されて止血する。これを生体結紮(せいたいけつさつ)という。
執筆者:岩崎 寛和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報