内科学 第10版 「後天性弁膜症の成因」の解説
後天性弁膜症の成因(後天性弁膜症)
(1)リウマチ性弁膜症(rheumatic valvular disease)
リウマチ熱に合併して発症した後天性弁膜症である.リウマチ熱は現在,先進国では非常にまれでわが国においても1970年ごろから激減しほとんど認められなくなったが,開発途上国においてはいまも認められる疾患である.診断はJonesの診断基準(表5-10-1)によってなされる.【⇨10-19-2)】
学童期の小児において咽頭,特に扁桃部におけるA群溶連菌の感染2~3週後に多関節炎,輪状紅斑,関節近傍に皮下結節が生じるとともに心炎を生じる.これは,A群溶連菌はヒトの心臓組織と交差反応する抗原をもっており,その菌の感染によりヒトの結合組織に対する自己抗体の産生が刺激され,各種臓器所見を呈することとなる.心炎では疣贅を伴うような弁膜の炎症がもたらされ,弁膜の腫脹,浮腫,変形を呈する.その治癒過程において線維性肥厚や交連部・腱索の癒合を生じ,弁狭窄または閉鎖不全,あるいはその複合が生じることとなる.おもに僧帽弁と大動脈弁の障害が目立ち,三尖弁単独の事例はまれである.
(2)動脈硬化性,変性による弁の石灰化,炎症,膠原病に合併するものなど
虚血性心疾患,老化変性などの増加による.血液透析症例では弁の変性速度が速く石灰化も進展しやすい.膠原病では関節リウマチ,SLE,強直性脊椎炎,抗リン脂質抗体症候群などで弁膜疾患の頻度が多い.弁膜症はその弁膜・成因により臨床像,臨床経過が異なる.[今井 靖・永井良三]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報