炎症の一徴候。古代ギリシア・ローマ医学の昔から、炎症という病変の四つのおもな徴候として、腫脹tumor、発赤(ほっせき)rubor、熱感calor、疼痛(とうつう)dororが知られていることは有名である。このうち、腫脹は俗に、腫(は)れて膨れること、あるいは、腫れを意味して使われたり、病理学的に、腫瘍(しゅよう)による局所の腫れも、ときに腫脹と誤って表現されることもある。
炎症にみられる腫脹、発赤、熱感などは、炎症の基本的病変である循環障害、滲出(しんしゅつ)、および細胞増殖に起因すると考えられている。とくに腫脹は、炎症局所の血管拡張、充血、血管透過性の亢進(こうしん)などの機序(メカニズム)によって、血管内のタンパクを含む血漿(けっしょう)や好中球、好酸球、リンパ球、単球などの血球が病巣内に出てくる滲出現象が主体で、これに局所組織内の細網細胞、組織球、線維芽細胞、肥胖(ひばん)(肥満)細胞などの細胞増殖が加わって生じたものと理解されている。
[渡辺 裕]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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