後天性血栓傾向

内科学 第10版 「後天性血栓傾向」の解説

後天性血栓傾向(凝固線溶系の疾患各論)

 代表的な後天性血栓症である抗リン脂質抗体症候群については【⇨10-10】を,血栓性血小板減少性紫斑病については【⇨14-11-5)】を,溶血性尿毒症症候群については【⇨11-6-9)】を参照されたい. その他の後天的な原因で血栓傾向をきたす疾患としてネフローゼ症候群ではATやPCが尿中に漏出して血液中の濃度が低下し,血栓傾向をきたすことがある.また,急性白血病の治療薬であるl-アスパラギナーゼはATとPCの産生を抑制するため血栓傾向がみられることがある.産生が低下して血液中の凝固制御因子のレベルが減少する疾患として重症肝疾患とビタミンK欠乏症があるが,いずれも凝固因子が同時に低下するためにむしろ出血傾向をきたす.ただし,先天性PC欠乏症と先天性PS欠乏症に対して血栓予防の目的でワルファリンを投与すると,ビタミンK依存性凝固因子の減少に先行してPCとPSが枯渇し,血栓による皮膚壊死(warfarin induced skin necrosis)を起こすことがある.その他,広義には糖尿病,高脂血症,肥満,高血圧,長期臥床や心血管系の障害(心房細動,心臓弁膜症とくに弁置換例,閉塞性動脈硬化症,Buerger病,川崎病など),びまん性にメサンギウムの増殖を示す腎炎などが後天性血栓症としてあげられる.表14-12-3に先天性および後天性血栓性素因をまとめた.[白幡 聡]
■文献
浅野茂隆,池田康夫,他監:三輪血液病学,文光堂,東京,2006.
丸藤 哲編:やさしく学べる血小板・血栓止血の管理,総合医学社,東京,2008.日本血栓止血学会編:わかりやすい血栓と止血の臨床南江堂,東京,2011.
小山高敏編:血栓・塞栓症の病態・検査・治療,Medical Technology,医歯薬出版,東京,2007.鈴木宏治,武谷浩之:凝固線溶系~凝固系の最近の進歩~.Thrombosis Medicine, 1: 13-20, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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