家庭医学館 「血栓傾向」の解説
けっせんけいこう【血栓傾向】
まず血管が破れると、その部分の血管が収縮して出血量が少なくなります。
ついで血小板(けっしょうばん)が破れた血管の内側の組織、とくにコラーゲンに粘着します。粘着すると、血小板からトロンボキサンA2やADP(アデノシン二リン酸)などの物質がつくられたり、放出されたりし、これらが血中のフィブリノーゲンやフィブロネクチンなどの接着たんぱく質によって血小板どうしをくっつけるようにうながします(凝集(ぎょうしゅう))。
こうして血小板の血栓ができ、出血が一応止まります。
血液中には血液凝固因子(けつえきぎょうこいんし)というものが含まれていて、血管が破れるとはたらきだし、フィブリノーゲンをフィブリンに変え、フィブリン網をつくります。これと血小板による血栓が結合すると、強固な血栓ができます(凝固)。
しかし、血管の破れたところで凝固が進みすぎると、血管がふさがれて血流がとだえ、先の組織が死んでしまいます。
これを防ぐために、血液には凝固阻止因子(ぎょうこそしいんし)やフィブリン網を溶かすプラスミン系物質や酵素(こうそ)もあって、過剰な血栓の形成を防いでいます。
このように自然な血栓の形成は、非常に多くの因子がかかわる複雑な過程であって、生まれつきや、なんらかの病気によって、血管が破れてもいないのに血栓ができやすくなることがあります。これを血栓傾向といいます。
血栓傾向の原因は、3つに分けられます。それは、①血管壁に一連の凝固反応をひきおこすような変化がおこる、②血液の濃縮や停滞がおこる(物理的な変化)、③血液の凝固や血栓の溶解にはたらくさまざまな物質の過剰や不足、欠如がおこる(化学的な変化)、の3つです。