体内の脂肪が一定以上に多くなった状態。高血圧や糖尿病などの原因になるとされる。国際的な指標として体格指数(BMI)があり、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った数値により測定する。日本肥満学会によると理想値は22で、25以上は「肥満」とされる。世界保健機関(WHO)の定義では25以上は「過体重」、30以上が肥満。実際の肥満度はBMIだけでなく体脂肪率とあわせて判断することが望ましい。(ジュネーブ共同)
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
(1)Douketis JD, Macie C, Thabane L, Williamson DF. Systematic review of long-term weight loss studies in obese adults: clinical significance and applicability to clinical practice. Int J Obes (Lond). 2005;29:1153.
(2)Clinical guidelines on the identification, evaluation, and treatment of overweight and obesity in adults: executive summary. Expert Panel on the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight in Adults. Am J Clin Nutr. 1998;68:899-917.
(3)Tsai AG, Wadden TA. The evolution of very-low-calorie diets: an update and meta-analysis. Obesity (Silver Spring). 2006; 14: 1283.
(4)Weinstock RS, Dai H, Wadden TA. Diet and exercise in the treatment of obesity: effects of 3 interventions on insulin resistance. Arch Intern Med. 1998;158:2477-2483.
(5)Metz JA, Stern JS, Kris-Etherton P, et al. A randomized trial of improved weight loss with a prepared meal plan in overweight and obese patients: impact on cardiovascular risk reduction. Arch Intern Med. 2000;160:2150-2158.
(6)Apfelbaum M, Vague P, Ziegler O, et al. Long-term maintenance of weight loss after a very-low-calorie diet: a randomized blinded trial of the efficacy and tolerability of sibutramine. Am J Med. 1999;106:179-184.
(7)Walker BR, Ballard IM, Gold JA. A multicentre study comparing mazindol and placebo in obese patients. J Int Med Res. 1977;5:85-90.
出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
皮下に過剰に脂肪が蓄積した状態。肥満は文明病とされ,発展途上国では一部の特権階級を除いてほとんどみられないが,欧米など先進国では40歳を超えると3~4割の肥満者が存在するといわれている。日本でも高度成長期の1970年以降増えつつあり,40歳以上で約3割の人が標準体重より20%以上の過剰体重を示すようになった。最近では重症の小児肥満も多くなり,社会的・教育的問題になっている。肥満が今日問題にされているのは,法定伝染病,結核のような感染症が栄養状態の改善や医療の進歩によりほとんど死に至らない病気になったのに対し,糖尿病,高血圧,脳卒中,心臓病などの成人病が死亡の主因となり,肥満がその発病の誘因として大きく関与しているからである。
通常,脂肪は体重の約18%くらい存在し,エネルギーの貯蔵部位として,また女性にとっては優美な体型をつくるものとしての役割を果たしているが,この脂肪が過剰に蓄積すると肥満となる。体の脂肪量を直接測定するには放射性同位元素を使うなど特殊な方法があるが,実地医療および健康管理などの点からは実施は困難である。そのため一般的には身長に対する標準体重を定め,標準体重に対する過剰体重をもって肥満度としている。標準体重の決め方には種々の方法があるが,成人ではブローカの変法と呼ばれる計算法が一般的である。これは,身長150cm以上は[(身長-100)×0.9]kg,150cm未満は[身長-105]kgをもって標準体重としている。判定基準としては,±10%以内を正常,+10~30%を肥満,+30%以上を肥満症とし,最後のものを治療の対象とする。その理由は,+30%以上の肥満者は死亡率の上昇とともに肥満に伴う合併症が,正常体重者と比較して急激に多くなるからである。
肥満は体に入った過剰のエネルギーを脂肪として体に蓄積することによるわけであるから,食事のとりすぎ(摂取カロリーの過剰)と運動不足(利用エネルギーの減少)が二大原因である。しかしながら,〈やせの大食い〉というような現象があるように,過剰エネルギーが体内に蓄積する生化学的および生理的異常が存在するはずであり,この異常が肥満の真の原因といえる。このような原因としては動物実験を基礎として,以下のような原因論が提唱されているが,人間の肥満の原因としてはっきり証明されているものはまだ存在しない。
(1)食欲調節機構の乱れ説 脳の中にある特殊な部位,視床下部には,食欲を増す食欲中枢と食欲を抑制する満腹中枢がある。肥満者はこの満腹中枢の感受性が低いために,満腹感が少ないことによって過食になることが原因であるとする説である。
(2)インシュリン過剰分泌説 膵臓から出るホルモン,インシュリンは,脂肪をつくったり,血液中の脂肪を脂肪細胞の中にとり込んだり,いったんたまった脂肪を分解しにくくする等の脂肪蓄積作用がある。このインシュリンが肥満者においては過剰に分泌されているという考え方である。これは,視床下部にある満腹中枢(腹内側核)破壊によって作成する実験肥満モデル,つまり視床下部性肥満動物では,インシュリン分泌の過剰が肥満の原因であることから導き出された。
(3)褐色脂肪細胞障害説 脂肪細胞には脂肪の蓄積に働く白色脂肪細胞と,熱をつくり体温調節に働く褐色脂肪細胞がある。ある種の遺伝性の肥満動物では,褐色脂肪細胞が少ないため熱の産生が少なく,そのため熱として失われないエネルギーが脂肪の形で貯蔵されることが肥満の原因と考えられていることから導き出された。
(4)脂肪細胞増殖説 脂肪を蓄積する白色脂肪細胞は,三つの時期にその数を増やすことがわかっている。第1は母親の胎内での妊娠末期の3ヵ月,第2は生後1ヵ年,第3は思春期である。この時期に過剰摂取状態になると脂肪細胞は数が増えて過剰カロリー摂取に陥り,これが難治性の脂満をつくるという考え方である。
以上の考え方は,人間においても一部の肥満の原因または多くの肥満の悪化因子として作用している可能性はあるが,人間の肥満の大部分を占める単純性肥満の原因と認められる根拠はまだ確認されていない現状である。
医学的には第1に死亡率が高率である。その死亡率はある統計によれば,30歳代では正常体重者の7倍以上,40歳代以上では2倍以上と報告されている。死因は心臓病が最も多く,次いで糖尿病,胆石症となっている。肥満者は脂肪過多のため手術が難しく,手術時の危険度も高いため死亡率が高くなること,また交通事故死なども正常体重者より多いことが統計的に認められている。第2は肥満に伴う合併症が多いことである。正常体重者と比較すると,糖尿病(5倍),高血圧(3.5倍),胆石症(3倍),心臓疾患(2倍),関節炎(1.5倍),不妊症(3倍)などが高率で出現し,さらに子宮体部癌も多いことが報告されている。ただ自殺は少なく,約7割である。肥満に伴う社会的不利益は日本ではまだ顕在化していないが,アメリカでは就職や昇進のおりに差別を受けることが問題になりはじめている。
治療は食事療法が基本である。食事療法としてはカロリー制限が中心で,肥満度が30~50%の中等度肥満者は標準体重に対して体重1kgにつき1日20cal,50%以上の重症肥満者は体重に関係なく1日1200calの処方を行っている。また,カロリー制限だけでなく,食事のタイミングもたいせつである。夜食症候群といわれるように夜寝る前に食べることは太ることにつながるので夜8時以降は食べないようにし,活動のエネルギーとして使われる昼間に多く食べ,夜は少なめに食べることがたいせつである。また食事は3食均等か,むしろ朝・昼食を多めに食べるほうがよい。よく朝食や昼食をぬく人がいるが,同カロリーを摂取する場合,回数を多くしたほうが太らないということは実験的にも証明されているので,食事の回数を減らすことは方法論的にも誤りである。アメリカでは食事療法の効果を高めるために,心理的療法をとり入れた行動療法や集団療法が行われている。また食事療法の補助療法として運動療法もたいせつである。体の脂肪1kgは約7000calのエネルギーを含んでいる。一時的に7000cal以上の運動はマラソンやボクシングのようなかなり過激な運動でないと達成は困難なため,一般の人には無理であるが,1日200~300calの運動を行うことは代謝の異常を是正して脂肪の蓄積を防ぐ作用があるのでたいせつである。運動によるカロリー消費は体格,体質により差があるが,目安は歩行では1時間半,縄跳び,水泳,サイクリングでは1時間が約200~300calのエネルギー消費にあたる。治療の速効を目的とする脂肪除去手術,吸収面積を小さくするために一部の小腸を切除する小腸バイパス手術,食事量を減らすための胃を縮小する胃バイパス手術や顎固定術のような外科的療法もあるが,日本ではほとんど行われていない。
一度肥満になると現代のように食物があふれている状況では治療はなかなか難しいので,その最大の治療は肥満の予防であるといえる。その第1は,脂肪細胞が増える前述の3時期の過剰カロリー摂取は脂肪細胞の数を増やして難治性の重症肥満に陥りやすいため,この時期の適正なカロリー摂取がたいせつである。ことに妊娠末期,生後1ヵ年間の過栄養は母親の責任である。第2は,ふだんの過剰カロリー摂取を避けることである。間食を避け,夜遅くなって食べないようにする。第3は,1日200~300calの運動を心がけ,体を脂肪のたまりにくい状態に保つことが肝要である。
→食欲
執筆者:井上 修二
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出典 あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)生活習慣病用語辞典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…この繊維は脂肪細胞ないし脂肪芽細胞が形成したものである。皮下や腹壁などの脂肪組織に脂肪細胞が増加し,かつそれぞれの細胞が大量の脂肪滴を蓄えると肥満が起こる。逆に,飢餓に陥ると脂肪細胞の脂肪滴は減少ないし消失する。…
…すなわち,血糖からみた糖尿病の重症度と血管障害発生との間に相関がなく,また血糖をコントロールしておいても血管障害が発生する場合のあることなどから,高血糖は糖尿病における粥状硬化の主要な病因にはなりえないという説が提唱されている。糖尿病(4)肥満 肥満そのものが動脈硬化の悪化因子として強調された報告は少なく,高血圧,高コレステロール血症,喫煙の習慣などが伴うと高度に動脈硬化を悪化させる。肥満(5)ストレス 動脈硬化症には当然代謝異常としての身体面の異常が存在するわけであるが,この代謝異常には心理的な問題が影響を与えることが知られている。…
※「肥満」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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