改訂新版 世界大百科事典 「御火焼き」の意味・わかりやすい解説
御火焼き (おひたき)
御火焚きとも書く。霜月(旧11月)に行われた火祭。京都を中心に盛んに行われた。宮中をはじめ公卿,神社,民家などで庭火を焚く行事で,朔日(ついたち)の知恩院鎮守賀茂明神からはじまってほとんど連日にわたった。御火焼きは,夕方から夜にかけて行うことを常とし,松薪を井桁に組み上げ中央にササを立て,これに神饌を供え神楽や祝詞を奏してのち,新たにおこした浄火をササに移す。燃えあがったところへ神酒をかけて,爆竹を3度ならして終わった。現行の御火焼き神事としては,八坂神社(11月1日),伏見稲荷(11月8日),白峯神宮(11月21日)などの諸社で行われている。とくに稲荷の御火焼き神事は,鍛冶職人などを中心に鞴(ふいご)祭と称して全国的に行われている。また,26日は愛染明王の御火焼きで藍染屋の祭りとなり,28日は不動尊の御火焼きで,風呂屋,瓦屋など火を使う家の行事となっている。この意味については,古来一陽来復のときにあたり火をもって陽気をたすけるといわれている。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報