御父つぁん(読み)オトッツァン

デジタル大辞泉 「御父つぁん」の意味・読み・例文・類語

お‐とっ‐つぁん【父つぁん】

《「おととさま」の音変化》子供が父を敬い、親しみをこめて呼んだ語。近世後期から中流以上の家庭で使われた。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御父つぁん」の意味・読み・例文・類語

お‐とっ‐つぁん【御父つぁん】

※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「おとっん、まだ熱いものを」
※異端者の悲しみ(1917)〈谷崎潤一郎〉一「お父つぁんだって私だって、その機械に手もつけた事はありゃしないんだよ」
[補注]例文の「」は、近世 tsa(ツァ)の音を表わそうとした表記。
[語誌](1)「お」は接頭語、「つぁん」は接尾語で、オトトサマ→オトッサマ(オトトサン)→オトッサン→オトッツァンと変化してできた語。ただし「おとっさん」と表記されたものはオトッサン・オトッツァン両様の可能性がある。明治後期以降、「おとうさん」が一般化するまで最も広く用いられた呼称
(2)「守貞漫稿」によれば、近世後期江戸の中層以上の町人武家で使われた。待遇意識や幼児の片言の影響などのない場合には、オトッツァン━中層以上、チャン━下層というような階層的分化が大体認められる。
(3)同じく「守貞漫稿」によれば、近世後期上方では、中層町人以上はオトッサン(オトッツァン)、下層町人はトトサンを使用した。ただし、「随筆・皇都午睡」によると、特に幕末期の大坂では、オトッサン(またはオトッツァン)の使用が広がっていたようである。→「おっかさん」「おとうさん」の語誌

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