日本大百科全書(ニッポニカ) 「微生物タンパク」の意味・わかりやすい解説
微生物タンパク
びせいぶつたんぱく
微生物体を構成するタンパク質をいう。微生物は速やかに生育するし、その体を構成する細胞中には高いタンパク質を含有するうえ、安価な炭素源や窒素源を利用して培養することができる。このような特性を生かして工業的に生産された微生物タンパクは、おもに家畜の濃厚飼料として利用することができる。工業的に微生物タンパクを生産するということは、培養によって微生物の細胞素材を廉価に得ることであるため、細胞収量を、できるだけ速やかに、そして最大にすることが要求される。このためには、(1)微生物は、かならず強制通気の環境下で培養すること、(2)培養基に関しては、窒素源として硫酸アンモニアのような無機態窒素を使用し、同時に、できるだけ廉価な炭素源を使用することである。したがって、炭素源では精製ブドウ糖より安価な廃糖蜜(はいとうみつ)(糖蜜精製時の副産物)、亜硫酸パルプ廃液、石油(n‐パラフィン)、メタン、メタノール(メチルアルコール)などが、次々と開発され、利用されてきた。また、対象となる微生物として、これらの炭素源を資化する(体内に取り入れて自分の体をつくる)ことが可能で、タンパク質収量の高い酵母や細菌が使用されてきた。現在、廃糖蜜や亜硫酸パルプ廃液を利用する微生物タンパクの生成にはカンジダ・ウティリスCandida utilisなどの酵母菌類が用いられている。また、石油を水の中に分散させた浮濁液中から微生物タンパク(石油タンパク)を得る場合には、カンジダ・リポリティカCandida lipolyticaが使われている。しかし、石油タンパクについては、日本では食品衛生学的な理由によって実際には利用の場が与えられていない。国際的にはノマルパラフィン、メタノール、エタノール(エチルアルコール)などの利用による微生物タンパク質(SCP、single cell protein)として工業的に利用されている。
[曽根田正己]