人形浄瑠璃。世話物。3巻近松門左衛門作。1709年(宝永6)大坂竹本座初演。大坂の鍛冶屋の弟子平兵衛と蜆川新地の遊女小かんとの心中事件を脚色した作であるが,実説の詳細は不明。大坂備後町の鍛冶屋大文字屋利右衛門の弟子平兵衛は,蜆川の新地平野屋の抱え女郎小かんと馴染みをかさね,その身請けの金につまったあげく,鍛冶屋を追い出された。一方,小かんも国許の播磨から乳兄弟が迎えにきて連れ帰ろうとしており,自分たちの前途に絶望した2人は屋根伝いに人目を忍んで逃れ出,小かんの叔母が住む北野の藍畑まできて情死した。〈氷の朔日〉という題は6月1日に情死したという巷説による。京の宇治加賀掾座ですぐに《天満明神氷の朔日》と外題を変えて上演された以外には,明治期まで再演や改作の記録はほとんどなかったが,大正期になって歌舞伎でも原作に近い脚本で取り上げられるようになった。
執筆者:諏訪 春雄
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